3D Roboticsクリス・アンダーソン氏が語るドローン産業活用の可能性

2017.1.19

「世界初のスマートドローン」を自称する「Solo」を開発する米3D Robotics社の共同設立者であるクリス・アンダーソン氏が来日した。来日の目的は、芝本産業株式会社とのドローン関連事業の共同展開に関する記者発表会の開催。3D Roboticsと芝本産業は、Soloを農業を始めとする各産業に活用していくことを目指す。

本記事では発表会の後に催された、アンダーソン氏によるドローンの産業活用に関するセミナーの模様をお伝えする。
アンダーソン氏と言えば、米Wired誌の元編集長で、あの「ロングテール」理論を提唱した人物。デジタル領域におけるその卓越した先見の明で知られる同氏が語る、ドローンの今後の可能性とは。
*以下、アンダーソン氏の発言は通訳者を介してのもの。

ドローンがワイヤレスの世界を変える

3D Robotics社が開発する「Solo」3D Robotics社が開発する「Solo」

アンダーソン氏:本日は皆様、お集まりいただきありがとうございます。私たち人類は、1968年に初めて宇宙空間から地球を眺めることができました。それによって、社会、政治を世界規模で考えられるようになったわけですが、それを一度目の変化だとすると、私たちはいま「二度目」の変化の時期を迎えています。リモートセンシングという技術によって。

アメリカの農地をドローンから捉えた画像アメリカの農地をドローンから捉えた画像

これが、ドローンから見た世界。アメリカのある農地を赤外線を使って撮影した画像です。衛星と異なり、ドローンは高度の低いところから撮影しますので、より高い解像度で物体を捉えることができます。いまは大きな物体を大きく捉えるのではなく、それぞれを個別に精緻に捉える時代です。こういう画像を使えば、農薬の散布、作物の収穫などに生かしていくことができます。また、ドローンを使ってデータを収集、供給して、マップを作るということも可能でしょう。

1998年に、「将来、ワイヤレスというものはどうなるのか」という大きな議論がありました。64個の衛星を打ち上げられ、それが全世界をカバーするという話と、セルタワー(電波塔)がカバーするという話です。セルタワーを各所に大量に立てるには、本数とそれに伴うコストが膨大になりすぎます。しかし、実際にはデータを収集する力という観点でセルタワーの方に軍配が上がりました。
さて、ドローンが登場しました。カバーする範囲、収集するデータのスケールという観点でセルタワーと比べるとどうでしょう。私はドローンの方が有効だと思っています。機体が安く、どこにでも、誰にでもデータを供給することができるからです。それにドローンか、セルタワーか、衛星かという話でもありません。セルタワーと同じように、ドローンも必要なところに必要なだけ飛ばせばいい。まずは衛星がカバーできないところを、ドローンがカバーすればいいのです。

「自動操縦」が産業にスケールメリットをもたらす

衛星、ドローン、飛行機の配備コストを比較した図衛星、ドローン、飛行機の配備コストを比較した図

こちらは衛星、ドローン、飛行機を配備するためにかかるコストを比較した図です。カバーする面積が広がっていくに従って、コストの差は大きくなります。
ドローンは操縦するひとがいまは少ないため、そこまでスケールしません。ここに、スマートドローンとしての「Solo」の強み、つまり自動操縦の強みがあります。スマートフォンとドローンを接続するだけで人間が操縦しなくてよくなり、これがコスト優位性につながるのです。

ドローンと衛星の配備コストを比較した図ドローンと衛星の配備コストを比較した図

星全体をカバーするなら衛星の方が勝るでしょう。しかし、家の裏庭などより細かい範囲をカバーするならドローンの方が勝ります。アメリカのカンザス州は日本の国土の5分の1ほどの面積なのですが、それをカバーするにはドローンなら20万機、衛星なら100機が必要と、農業関連の企業が言っていました。イニシャルコストはほぼ同じですが、付帯するコストを考えると衛星はどうしてもかさんでしまいます。しかし、捉える映像やデータの精度はドローンの方が100倍優れています。より低い高度から捉えることができるからです。

ドローンは、スマートフォンを通じてクラウド、もしくはドローンが直接クラウドにつながるという位置づけになっています。SDKを使うことで、これからさまざまなレイヤーの中でさまざまなアプリケーションが登場していくでしょう。そうしたアプリケーションを使って収集されたビッグデータを、今後どのように使っていくかがいま議論されています。収集したデータを分析して、活用する、フィードバックして、ということが、ドローンを使えばスマートフォンのボタンを押すだけで行える。これは、飛行機にはできません。

パイオニアとしてのルーツは「祖父」

アンダーソン氏の祖父の写真アンダーソン氏の祖父の写真

アンダーソン氏:これは私のおじいさんです。彼は1930年代に、タイマー付きの自動のスプリンクラーを自分で開発し、庭に設置しました。彼の姿が、私にとって最初のインスピレーションです。「このスプリンクラーがドローンである」と考えてみてください。

スプリンクラーはいま世界中に広がっているロボットであり、一度プログラムしてしまえば自動的に動くもの。ドローンもいつか、自動でテイクオフして、映像を撮影できるような時代がやってきます。空撮だけでなく、農業や各産業のリサーチ分野にも生かされるようになるでしょう。

玩具市場への参入、カメラ自社開発の計画はない

質問者:玩具市場への関心の度合いは?

アンダーソン氏:玩具市場には関心はありません。いまは多くのドローンは個人の映像制作のために使われています。個人で行うモノづくりというものは、黄金時代を迎えていると言っていいでしょう。ただし、より芸術性の高いモノづくりを行うには依然コストがかかります。ハリウッドはヘリコプターを撮影をしていますが、趣味で楽しむひとにとってはセルフィー棒で十分ですよね。

3D Roboticsには映像制作などクリエイティブなスキルはありませんが、ソフトウェアがあります。いまどのスマートフォンを見てもハードウェアの部分に大きな違いは見受けられません。違いは、ソフトウェアの部分にあります。ドローンも同じです。ドローンに搭載されるソフトウェアが発達すれば、収集したデータをスマートフォンやクラウドに送信することでさまざまが問題が解決され、また多くのひとがこの産業に関わるようになるでしょう。

質問者:SoloはいまカメラとしてGoproを搭載していますが、今後自社でカメラを開発する計画は?

アンダーソン氏:今のところありません。ただし、日本の企業とコラボレーションしていく可能性はあるでしょう。日本のカメラの技術は、世界でも随一だと思っています。しかし、カメラはスマートフォンや自動車に内蔵されるようになっていますので、カメラ単体の市場は小さくなっていますよね。

いま多くのドローンには1つしかカメラが搭載されていませんが、これからは8つ、そして100個載ることもあるでしょう。また、もし搭載されたカメラが無料になるとしたら、ドローンが収集し、クラウドに送信するデータの量はものすごく増えていくでしょう。

会場からも鋭い質問が飛んだ会場からも鋭い質問が飛んだ

質問者:ドローンとほかの物体の衝突のリスクについては?

アンダーソン氏:今後ドローンがより小さく、安価に、軽量化され、もはや使い捨て可能なくらいになれば、衝突に関するさまざまな問題が解決できるようになると思います。

質問者:ドローンで農薬を散布することについては?

アンダーソン氏:これについては非常に難しい問題があるのではないかと思います。アメリカでは大きなタンクを背負ったようなものでなければ使えませんので、新たに開発しなければなりません。ただ、作物の種を落としてみたり、土壌のサンプルを採取するといったことは可能だと思います。

質問者:セキュリティや監視の分野におけるドローン活用の可能性と課題は?

アンダーソン氏:非常にいい質問ですね。例えば、赤外線カメラをドローンに搭載することもできると思います。地面に接地しているカメラと飛行するドローンの撮影可能な範囲を比較すると、ドローンの方がはるかに広範囲だと思います。
それについては私たちもすでに研究を進めています。

例えば、ドローンが2機飛ばして旋回させ、1機が戻ってきてチャージしている間に2機目を飛ばすことで、常に100%のカバレージを提供するというもの。倉庫や学校などあらゆる施設で、アラームが鳴ったらドローンが自動で発進して映像を撮影するということも数年以内にできるようになると思います。そのときには、もはやひとがレバーを操作してドローンを遠隔操作する必要もなくなっているでしょう。

質問者:日本は世界でも初めて超高齢化社会に突入していきます。それに伴う課題に対するソリューションとしてのドローンの可能性は?

アンダーソン氏:つまらない、危険、汚い仕事をできることも、ロボットの役割だと思います。農業においては、従事するひとが減ってきている中で高齢者の方々をはじめ、ひとをどのように配置するかを今後考えていかなければならないでしょう。

例えば、データを収集するという仕事は人間よりもロボットが得意とするところで、そのような役割分担は求められていくでしょう。
私にも年老いた両親がいますが、ロボットが彼らの世話をするということも考えられるでしょうね。そのあたりは自分たちのチョイスによるのだと思います。個人的にはやはり自分の親は人間に世話をしてほしいと思いますが。

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