空き部屋を貸したい人と宿泊先を探す人をつなぐサービスで、世界最大級の宿泊予約サイトとなったAirbnb 。
そんなAirbnbのオフィスはどんな働き方をしているのだろうか。
ポートランドオフィスを実際に取材し、話を聞いた。

Airbnbとは?
空き部屋を貸したい人と宿泊先を探す人をつなぐサービスで、世界最大級の宿泊予約サイトとなったAirbnb 。
リーズナブルな価格で借りられる部屋もあれば、現地の生活に溶け込んだユニークな部屋も探せることで人気だ。
2008年に創業し、現在は世界191カ国で300万を超える数の部屋がサイトに掲載されている。最近では宿泊だけでなく、ホストによる地元でのユニークな「体験」の提供も始まった。
さて、今回は「Airbnbの働き方」にフォーカスし取材を行った。
Airbnb のオフィスは、社員の働き方も先進的なのだろうか?
米オレゴン州ポートランドのオフィスを訪ね、話を聞いた。
Airbnb のオフィスは、グローバル・ヘッドクォーターの米カリフォルニア州サンフランシスコをはじめ、世界に19カ所。
その中でサンフランシスコとダブリン(アイルランド)、シンガポール、そしてポートランドの4つは規模の大きいオフィスだ。
全世界の社員数は約3000人。そのうちポートランドでは330人の社員が働いている。
ダブリンとシンガポールは、それぞれヨーロッパとアジアの拠点と理解できるが、なぜポートランドにも大きいオフィスを構えたのだろうか?
広報のローラ・リロス氏は、
「ポートランドはシェアリング・エコノミーを受け入れていて、サステイナビリティを重視しています。それに加えて、グローバル・ヘッドクォーターのあるサンフランシスコからも近い。北米のオペーレーション本部として、すごく適した場所です」
と語った。
2014年にオープンしたポートランドのオフィスで一番多い職種はカスタマー・エクスペリエンス、顧客体験をマネージメントする仕事だ。
その他にもエンジニア、デザイナー、リサーチャー、データ・サイエンティスト、そしてフードチーム(オフィスでの食事の管理)など様々な職種のメンバーが働いている。
1880年築の歴史ある建物に構えるオフィスには、オフィスチェアはもちろん、より足を伸ばしてリラックスできるソファーや、スタンディングデスク、ハンモックなど様々なワークスペースで社員たちは集中して仕事をしていた。
顧客対応の仕事をする人が多いオフィスと言っても、典型的なコールセンターのような区切られたスペースにヘッドセットをつけたオペレーターがずらりと並ぶ光景とはまったく違う。
働くメンバーの多様なワークスタイルや好みに配慮して、スペースがつくられているのだ。たとえば内向的な人、社交的な人、明るい場所が好きな人、暗めの照明が好きな人、仕切りのあるところで集中したい人、外付けディスプレーを使いたい人……といろいろなニーズがあるので、いつでも社員がベストの仕事ができるよう環境を選べるようにしているのだという。
オフィスはAirbnbのミッションを肌で感じる作りに
こうしたオフィスの空間づくりは、『どこでも居場所がある(Belong Anywhere)』というAirbnb自体のミッションに通じていて、大部分のスペースは社員の誰でも使用できるようになっている。
ミーティングルームは、実際のAirbnbの物件に近い作りのものがいくつもあり、東京の名前が付いた部屋や、ハチの巣や船に着想を得た部屋、小屋のような部屋もあった。
クラクフという部屋にはベッドもあり、昼寝はOKなのか聞くと、それは禁止だそうだ。

Airbnb Portland Office
世界各国のテイストの異なる部屋をオフィス内につくることで、Airbnb自体の世界観を表現すると共にサービスを利用するユーザーの気持ちを体験しよう、という狙いもあるだろう。
これらの部屋のコンセプトやデザイン、飾り付けは社員自身が関わっているという。
また、オフィススペースや家具は、ポートランドの地元のショップとつくっており、地域密着の姿勢が感じられる。
また驚いたのは、社員が有給で月4時間ほど地元コミュニティに貢献するボランティアもしているそうだ。
新鮮で地元愛を感じるオフィスの食文化
今回の写真にはないが、オフィスから歩いて数分のところに社員用レストランがあり、そこで昼食を食べることができる。
また余りが出た食べ物は近隣のホームレス施設に寄付しているそうだ。
コーヒーやお茶、コンブチャなども地元のものを使用しており、ポートランドで有名なクラフトビールも就業後なら飲むことができる。
社員用レストランの食事や、オフィス内のドリンクやスナックの管理は専属のフードチームが担当。食事はすべてAirbnbのキッチンで一からつくられている。栄養のあるおいしいものを食べることで、生産性や健康も向上し、食堂で社員が一緒に食べることでクリエイティブなアイデアも生まれる、という食に対する考えがその根底にある。
アスリートと同様、良いパフォーマンスを出し続けるためには食事にも気を配ることが大切だとAirbnbでは考えているようだ。
より良いチームワークづくりのために大切にしていること
勤務形態はフレックススタイル(朝7時から夜7時までの間)。
オフィスを案内してくれた社内ホスピタリティー部門のエミリー・ワーナー氏の仕事は、職場環境をより良くすることだ。
ヨガやメディテーション(瞑想)、ハッピーアワー、ゲームナイトなど、仕事以外でも社員同士が一緒に楽しめるイベントを企画している。
また、ホストがゲストに宿泊体験を提供し、もてなすサービスの会社ということもあり社内でも相手をどうもてなすかという“ホスト体験”を大事にしているようだ。
社内には感謝の気持ちなど同僚への手紙を投函する小さなポストもあった。
ワーナー氏は、ファミリーのようなフィーリングで働いてほしい、という考えが社内にあると話していたが、これもその表れだろう。
他の会社と同じく、普段の仕事のやり取りはオンラインで行われることが多いが、やはり手書きのメッセージを受け取ると、デジタルにはない暖かみも感じられてうれしいもの。社員の間での感謝を伝える素敵なきっかけづくりだと感じた。
他にも、社員のインスタント写真が飾られた壁面があったり、日付ごとのクリップボードに社員の誕生日が記された大きなカレンダーもあった。
かつて、日本でも大企業を中心に社員食堂や福利厚生が充実していた時代があったが、Airbnbはその21世紀版でテクノロジーの利点や、デザインと機能性に優れた空間づくりとより良いチームワークを生むための仕組みが組み込まれていた。
Airbnbでの予約のやり取りはオンラインで完結するが、実際にゲストが体験するのは宿泊する部屋というリアルの場。Airbnbのオフィスもテクノロジー一辺倒ではなく、地元とのつながりや、おいしく栄養のある食事を一緒に食べること、ファミリーのような信頼関係などリアルの暖かみが感じられる場所だった。
「写真提供:Airbnb」

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