DJIはクローズドか? DJI JAPAN呉社長が明かす戦略と市場の課題

2017.1.19

日本科学未来館で大規模なテクノロジーカンファレンスイベント「BreakThrough Summit2015」が開催された。初日は「Fintech」、二日目は「ドローン」をテーマに各分野の有識者をゲストスピーカーとして迎えた同イベント。業界関係者のみならず、これから起こるイノベーションに思いを馳せる多数の来場者で盛り上がった。
本記事では、ドローン世界最大手のDJIの日本法人であるDJI JAPAN株式会社の代表取締役社長 呉韜氏、産業用ドローンのワンストップサービスを提供する株式会社プロドローン取締役副社長、菅木紀代一氏が登壇したトークセッション「CaseStudy:ドローンが飛び交う未来」の内容をお届けする。モデレータは、ドローンコミュニティ「ドローンクラスター」の主宰者であり、スプリングフィールド株式会社代表取締役 春原久徳氏が務めた。

DJI代表が登壇した本イベント

登壇者
・ゲストスピーカー:菅木紀代一 株式会社プロドローン取締役副社長
・ゲストスピーカー:呉韜 DJI JAPAN株式会社代表取締役社長
・モデレータ:春原久徳 スプリングフィールド株式会社代表取締役、セキュアドローン協議会会長
*主にDJI JAPAN呉氏の発言を抽出し編集しております。

DJI「日本は7割がBtoB、2020年の市場規模は32億円以上」

春原久徳(以下、春原):ドローンの活用が今後期待される業界に関する調査によると、動画や画像の撮影といったものは全体の市場規模の4分の1程度。その他は例えば、2番目に精密農業、そして監視・モニタリング、測量業界と多岐に分かれていくのが面白いところです。

ドローン市場の調査レポート。フロスト&サリバン調べドローン市場の調査レポート。フロスト&サリバン調べ

日本でもシードプランニングが数ヶ月前に市場調査レポートを発表しました。裏話としては、同社の調査はちょうど首相官邸にドローンが墜落する直前に出されたのですが、あの出来事でドローンが注目を浴び、同社のサポートの中でもトップクラスに売れたということでした。

シード・プランニングによる2015年上期の市場の調査レポートシード・プランニングによる2015年上期の市場の調査レポート

フロスト&サリバンは、2020年には世界の市場規模が1兆円。シードプランニングは、2020年には186億円と予測しています。後者によれば、2015年の時点では16億円、そのうちの70%、14億円くらいは農薬散布が占めています。その後、農薬散布自体の市場は微増だけれども、整備点検、測量などの市場が拡大すると言われています。
これに関しては、日本のドローン市場の70〜80%のシェアを占めているDJIさんが割とリアルな数字を持っているのではないかと思います。そのあたりをお伺いしたいと思います。

呉韜(以下、呉):日本はアメリカやヨーロッパと違って、やはりビジネスユースが非常に多いです。われわれが実施した調査によると、70%くらいがBtoBのユーザーであることが分かっています。そうしたユーザーを含めると、市場規模はすでに16億円以上になっているかと。2020年にはおそらく、シードプランニングが予測している数字の倍以上になっていると思います。

春原:さまざまある機種の中では、やはり「Phantom」が一番売れているのでしょうか。

呉:はい。サイズが一番大きいドローンは「S1000」と呼ばれるものなのですが、それはPhantomの10分の1もないくらいの出荷台数です。

春原:「Inspire」はいかがでしょうか。

呉:Phantomの5分の1くらいです。

春原:しかし、Inspireは空撮機としてはトップクラスですよね。

呉:そうですね、空撮のために作りましたので。

春原:このほど新しいジンバルとカメラシステムを発表されましたね。先日行われた国際展示会の「インタードローン」でその機能が発表されていましたが、会場はどよめいていました。

呉:空撮のために、より安全でなければならない。つまり、小さな機体の中に高機能な機材を詰めなければならないというミッションのもと開発されたのが「X5」という機体です。従来よりも非常にコンパクト。テレビで放映される映像の撮影のほとんどの要望に応えられる機体です。これ以外にも無線の通信装置、さらに高機能なものをも自社で並行して開発しています。

春原:先ほどのDJIさんの数字などを踏まえると、シードプランニングの数字は控えめな印象を受けます。年末に再調査するということでした。

各分野で深まるドローン活用の可能性への理解

春原:産業でのドローンの活用について。例えば、ジャーナリズムの分野では、昨年の香港デモのあたりから世界的にも使われるようになりました。スポーツの分野では、ソチ五輪で使用されました。私のところにも「視点を変えたい」「ダイナミックに撮りたい」といった要望を持つスポーツカメラマンの方からの相談がありました。
精密農業の分野では、ドローンにセンサーを搭載して飛ばすことによって、作物の生育、害虫や作物の病気の発生、地質や水質、地面の水分量といった状況が分かります。いままでは人工衛星などでこうしたことを実施していましたが、数メートル単位の誤差が出てくるのと、金額的にもかさむという課題がもありました。
さらには、建築や土木、防犯や点検、工場や倉庫(IDタグでの在庫管理)、医療の現場など、いろいろな分野で活用が広がっています。このあたりの状況を菅木さんはどのように見ていますか。

菅木紀代一(以下、菅木):随分と変わってきていると思います。2、3年前までは何にでも使えるプラットフォームとしての機体を作ってほしいという方が多かったのですが、昨年あたりからは土木の分野や太陽光パネルの点検に利用したいという方、少し変わったところでは谷の下まで行って毒ガスを検知する、いわゆるクロマトグラフィーに利用したいという方も出てきました。
今年に入ってからは企業も動き始めました。これからは、農薬散布を検討している大手企業が年間1万台発注するようなことも出てくる可能性があります。いままでは企業がドローンで何ができるかを把握するためのお試し期間でした。それが少しずつターゲットが絞られてきて、今後は企業からこういったものを作ってほしいと要望が出てくる時期に入っていくでしょう。

春原:例えば、コマツがスマートコンストラクションをコンセプトにしていますね。いま一番効果が出ているのが、測量の分野です。いままで3日間かかっていた測量が、20〜30分でできるということで非常に注目を浴びていますね。

ドローン市場の主なプレーヤードローン市場の主なプレーヤー

DJI「プラットフォームに専念。パートナー企業を支援」

春原:サービス産業におけるドローンの活用の仕方の一つに、ビッグデータを扱うソフトウェアやクラウドサービスとの連携があります。3D Roboticsの「Dronecode(https://www.dronecode.org/)」というプロジェクトでは、オープンソースでのソフトウェア開発が行われていますね。それに対してDJIさんは、これまでどちらかというとクローズドな印象でしたが、どのような戦略を持っていますか。

呉:弊社は2006年から無人機の操縦システム、つまり自動制御システムを作ってきました。その過程で起こった墜落事故などの経験を生かして、より安全なシステムを作る企業努力はしてきたと思います。その部分は、あえてオープンにしません。さまざまな状況に応じた安全性、そのためのセーフティー機能を、弊社で確保できるようにしています。
一方で、アプリケーション、クラウドサービス、そのためのインターフェースはどんどん開示していきたいと思います。そこはおそらく、3D Roboticsとの差であると思います。

プログラミングにおけるDJIと3D Roboticsの比較の図プログラミングにおけるDJIと3D Roboticsの比較の図

春原:生産技術を持つ日本の企業が今後ドローンとどのようにつながるとよいのかということに関心があります。インターフェースが一律になってきたりすると、日本の企業も市場に参入しやすいのではと思います。

菅木:そうですね。ドローンメーカーには、ドローンができるだけいろいろなことができるようにしていただきたい。ただし、誰でも触れる、飛ばせるようになると逆に危険な場合もありますので、購入者のフィルタリングは必要になってくるのではないかと思います。

春原:ドローン産業が今後さらに伸びていくために乗り越えなければならない課題は。

呉:日本では、まずは法律の整備がメインになっていくと思います。ドローンを飛ばしてよい場所、飛ばすために必要な資格、そうした学習をしたり、資格を取得するための環境づくり、こうしたことを今年から来年にかけて一番やっていくべきだと思います。

春原:先ほどもデジタルハリウッド大学の杉山学長が出られていましたけれども(http://catalyst.red/articles/drone-entertainment)、アメリカでは大学から専門学校まで数十の学校ができ、操縦士のオペレーションだけではなく、フライトのプランニング、メンテナンスなども学べるそうで、ドローン産業を支えるための準備が広がっています。DJIさんも投資したりいろいろなファンドを用意されていて、パートナーを増やしているようですね。

呉:そうですね。ドローンのアプリケーションにしても無数にありますし、それらすべてを弊社だけでできるわけではありません。ですから、われわれは主にプラットフォームに専念します。そのプラットフォームに新しい価値を付加していくパートナー企業と技術的に提携したり、彼らを金銭的に援助をしていこうと思います。

左からモデレータの春原氏、呉氏、菅木紀氏左からモデレータの春原氏、呉氏、菅木紀氏

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