「ドローン」という言葉が広く知られる前から、ドローンを駆使したパフォーマンスを披露しているお笑い芸人「谷+1。」をご存知だろうか。
2016年5月11日にTBS系列で放送された『水トク!「アイ・アム・冒険少年」』でゴールデン進出を果たしたドローン芸人だ。同番組では、バヌアツ共和国ヤスール火山の火口でマグマを空撮したり、ザンビア共和国でビクトリアの滝を空撮したりと、危険な場所で命がけの空撮に挑戦し話題となった。
今でこそドローンを使ったパフォーマンスでゴールデンタイムの番組に出演できるようになったが、これまでの道のりは平たんなものではなかった。
10年以上の「売れない芸人」時代。この状況を大きく変えたのがドローンとの出会いだ。
前編と後編の2回にわたってお届けする本連載。前編となる今回は、谷+1。さんに芸人人生を大きく変えることになるドローンとの出会いについて語ってもらった。

ネタをやっても「空調の音しか聞こえない」
ー谷さんと言えばドローン芸ですが、もともとお笑いの世界に入ったはいつ頃ですか。
専門学校を卒業してからすぐに芸能プロダクションがやっているお笑いの養成所に入ったのでかれこれ10年以上前になります。
ー当時はどんなスタイルのお笑いだったのでしょう。
コンビを組んで漫才をやったり、ピンで漫談をやったりしてました。
お笑いの養成所は一年間のコースで最終試験あるのですが、最終試験で落ちてしまって、、、
ーお笑いの最終試験ってどのような試験なんですか。
卒業ライブで笑いを取り、事務所関係者から評価を受けて決まります。
ーなるほど、1発勝負なんですね。厳しい世界ですね。
まだお笑いの道が諦めきれず1年バイトをして次なる事務所の門を叩きました。
できたての事務所だったのでなんとか所属することができました。
ーそこでドローン芸を始める。
いやまだですね。この事務所には7年間くらい在籍して、漫才、1人コント、リズムコントなどいろいろ試しました。それでもなかなか売れなくて、、
30歳近くなってこのままだと売れないと思い、最後に思い切って移籍を考えました。
芸人として歳も歳なので移籍するのはとても難しいことでした。
お世話になってる先輩もいたので、一からスタートしよう今の事務所の門を叩きました。
ー最近のことですよね。
2012年くらいですね。
ーそこでようやくドローンが登場する。
まだドローンは使ってないです。移籍した直後はまだ漫談とか1人コントとかやっていました。
でもやっぱりウケなくて、ネタをやって聞こえるのは空調の音だけ(笑)
それで、自分の好きなことをやってウケなかったらお笑いを辞めようと思って始めたのが「ラジコン芸」です。
ーなるほど。もともとラジコンが好きだったんですね。
ドローンとお笑いの融合
ぼくは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が大好きで、映画に出てきそうなガジェットとか車に興味があるんですよ。
特にAppleプロダクトはすごく好きで、youtubeでレビュー動画をアップしてたこともあります。
ーAppleオタクでドローン好き。なんだか稲田(ダリアン)さんみたいですね(笑)
ーラジコン芸ってたとえばどのようなことをやっていたのですか。
木槌を装着したRCカーをドリフトさせてだるま落としをしたり、猿回しをまねた「ラジコン回し」とかです。
ーなんとシュールな(笑)
今までよりお客さんの反応はよかったのですが、ライブ会場でラジコン芸をやると「位置が低くて見えない」というコメントをもらいまして、これは致命的だったんで、RCカーを使ったラジコン芸はすぐに封印しました。
それでどうしようと考えていたところ、ふと目に入ったのがもともと持っていたParrot社のARドローンなんですよ。
ー2013年頃にドローンを持っていたというのは。かなり時代を先取りしてますね。
ドローンって『バック・トゥー・ザ・フューチャー』に出てくるホバーボードみたいに宙に浮くじゃないですか!そういう理由です(笑)
このARドローンを何かに使えないかと考えて、ネタを書いた紙を丸めてドローンに乗せてフリップさせたら丸めた紙が飛んだんですよ。
そのとき「え、飛ぶじゃん!これだ!」と。
ーこれがドローン芸「マシュマロキャッチ」の起源なんですね。
でも、ぼくの持っていたのがARドローンのバージョン2で、すでにみんな知っていて「古いよ」って批判されると思ってたんですよ。
ー2013年ってまだ「ドローン」という言葉がぜんぜん知られてないときですよね。古いどころか、新しすぎたんでは。
その通りです(笑)
「ARドローンを使ってネタします」って言っても「ドローンって何?」って、誰も分からなかったんですよ。
だから当初は紹介されるとき「ヘリを使ったネタ」って説明されてました、、、
ー当時はドローンでどんなネタをやっていたんですか。
マシュマロキャッチだけでなく、ドローンと漫才やったりしてました。ドローンにつっこむとか。
ー未来のお笑いですね(笑)
ちょうどその頃テレビ用に1分の尺も増えてきて、ドローン芸がこの尺にぴったり合うというのもラッキーだったと思います。
ーその頃からテレビ出演なども増えて「ドローン芸人」として知られるようになるんですね。
そうですね。なんというか、ドローン芸を始めてからぼくは「自分を消す」ことにしたんですよ。「自分が売れたい」という欲を消して、ドローンの楽しさや可能性を世に広めようって。そこから不思議とオーディションに受かるようになり、いろんなところからお仕事をいただくようになったんですよ。
ドローンに出会えてなかったら、ぼくは世に出ることができなかったと思ってます。
ドローンとの出会いで芸人人生が激変した谷+1。さん。後編では、ドローン芸を引っさげての海外武者修行、そして新たに始めたドローンレースを通じて何を目指すのかを聞いた。

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