「ソーシャルな隠居」でライフスタイルに変革をー新潟の限界集落の挑戦

2017.4.20

新潟県十日町市の限界集落に突如出現した新時代のコミュニティ「ギルドハウス十日町」とは。新しいライフスタイル・働き方を模索するひと必見。

新潟県の限界集落にある新時代のコミュニティ「ギルドハウス十日町」

いま日本各地さまざまな場所で「新しいライフスタイル・働き方」を模索する取り組みが活発になってきている。

新潟県十日町市の限界集落にある「ギルドハウス十日町」もその1つ。

一見どこにでもある古民家だが、ここでのライフスタイルは先端そのものだ。

ゲストハウス、シェアハウス、そしてコワーキングスペースの良い要素だけを取り入れたこの場所には、日本国内だけでなく世界各国から多種多様なひとたちが集まるという。

旅行の宿として利用するひと、住人となって長期間滞在するひと、仕事スペースとして利用するひと、さまざまなひとたちが訪れ、その数は2年間で延べ5000人を超えたという。

そして、この場所はひととひとがつながり、新しいビジネスアイデアを醸成される場としても機能している。実際にここで生まれたビジネスアイデアが事業化される事例は数多くある。

この「ギルドハウス十日町」を立ち上げたのは、西村治久さん。この場所に移住する前は東京や地方都市などでバリバリ働いたWebプランナーだった。

なぜ都会から離れ、新潟の限界集落に移住しギルドハウス十日町を立ち上げたのか、そしてこの場所は新しいライフスタイルを模索するひとにとってどのような意味を持つのか。

西村さん
西村治久
1971年生まれ。埼玉県出身。
住み開きの古民家「ギルドハウス十日町」の創設者。2011年にIT企業を退職し、その後3年以上ノマドワークをしながら各地を旅する。2015年にギルドハウス十日町を開設し、家主・代表としてのギルトマスターとなる。このほかにも、さまざまなコワーキングスペース、シェアハウス、ゲストハウスのプロデュースを手がける。世界的起業家コミュニティの新潟版「Startup Weekend Niigata」発起人を務めるなど活動範囲は多岐にわたる。

「ギルドハウス十日町」とは?

—ギルドハウス十日町には、さまざまな場所からいろんなひとが来て、住んだり、仕事したりしていると聞きました。いまは何人くらいがここに住まわれているのでしょうか。

いま住んでいるのは15人なんですが、お茶を飲みに来る地元のひととか、春休み期間だけここに泊まりに来る学生がいたり、起業したいひとも多く訪れます。

ここに来るひとたちは観光目的ではなくて、体験価値を得ようとここをめがけて来る。

ビジネスアイデアを持って来るひとたちは、ここをワーキングスペースとして使ったり、ここにいるひとたちとアイデアを練ったりできますし、その繋がりからある企業の社長さんとかいろんなひとたちと繋がって、事業化するなどしています。


新潟の氷の事業に取り組む人や


村の子供たちの太鼓を手作りをする人など多様な人がギルトハウスにいる。

—住むだけではなくオフィスとしても使えるのですね。

そうですね。ここと東京の2拠点にオフィスを持って行ったり来たりするひともいますよ。

ファッションデザイナーやってるひとや作曲家などさまざまです。

ほかにはスローライフを楽しみたいとか、少し疲れたから休息する場所として利用するひともいますね。

—多様ですね。ワーキングスペースとしてだけだと、あまり休める環境にはならないですし。

そうですね。バランスが良いコミュニティとでも言えるかもしれませんね。

「がんばろう」とやっているひともいれば、「休もう」とダウンシフトするひともいる。それがうまい具合に交わっていいバランスになってるんじゃないかな。

たぶん意識の高いひとばかり集まると自分が疲れちゃうし、そのうちひとも集まらなくなると思いますよ。

—たしかに。意識高いひとばかりだと「自分もそうしないといけない」と考えてしまいがちになりそうですしね。

周りの目が気になるでしょ。でもここはそうじゃない。ここってニートが来ても賞賛される場所だからね。「お、ニートなの?すごいね」みたいな感じがあるので。

ここのコミュニティで生活をすると、それまでの固定観念が削ぎ落とされていくんですよ。

たとえば、ここでは家賃という概念がなくて、家賃を稼ぐために働くという固定観念が削ぎ落とされます。

決まった家賃はなくて、あくまで生活費として出せる範囲で出してもらっているだけ。極端な話「お金ないんです」っていえば「しばらく出さなくていいよ」ってなるんですよ。

働くということについても、ほとんどのひとは働くことを目的と考えていますが、働くことはあくまで生きるための手段であって目的ではない。そういう固定観念がここに住んでいると削ぎ落とされていくんですよ。


当番は特に決まっておらず、作れる人がみんなの料理を作る。


こたつを囲って晩御飯をみんなで食べる

仕事を辞め旅人に、そしてギルドハウス立ち上げへ

—西村さんがこの地にギルドハウス十日町をつくろうと思ったきっかけはどのようなものだったのですか。新潟とは以前から繋がりがあったのですか?

いえ、ぼくは埼玉出身で、最初は東京勤めだったんですよ。

普通に大学卒業して、新卒でIT企業に入って転職も含めると20年ちかくバリバリ働いてました。それがものすごくハードワークだったんですが、40歳になったとき、東日本大震災が起きて、そのタイミングで自分自身の暮らし方を見直すようになって。

それまでずっと会社勤めをしていて、でもこの先ずっとこんなハードワークを続けられるわけないと。

ちょうどその頃FacebookとかSNSがすごい普及し始めている時期で、個人で情報発信してなにかできそうだと可能性が見えてきて、思い切って会社を辞めたんです。

会社を辞めたとき、なんとなくやりたいことのイメージはあったんですよ。SNSを使った情報発信を活用してできること。

あとその頃「コワーキング」という言葉を知って、東京で何件かコワーキングスペースを見にいったんですけど、それがすごくおもしろくて。

おしゃべりしながら仕事が生まれる、なんだこの空間はって驚かされたんですよ。

それで新潟にもコワーキングスペースがあるのかなと見たらなかったので、自分でプロデュースしようと。そのときから「コミュニティ」にも興味を持ちはじめて。

—なぜ新潟だったのですか。

2011年に会社を辞めて3年以上ノマドワークしながら旅をしていたんですよ。その旅でいつの頃からか自分の好きにできる場を持ちたくなって。空き家を探していたらたまたまたどり着いたのがここだった。

ご縁があったといえばあったのかもしれないですけど、ゆかりがあったわけでもなく。

西村さん

—旅で流れ着いたこの場所でギルドハウス十日町を始めたのが2015年と。

そうです。やっと自分の拠点を見つけたと思って。だからもう隠居生活に入ったんですよ。

—でもまだお仕事はされている。

仕事というかライフワークですかね。仕事をしているという意識はなくて。

ただ他の隠居生活とは違って、自分のは「ソーシャルな隠居」なんですよ。

ソーシャルな隠居とは、世間と隔絶されない、ひととの繋がりがより広がるような隠居生活のことです。

ここにいるだけで世界が広がるんですよ。国内外からいろんな情報が入ってくるし、いろんなひととの人脈が広がって、多様な生き方とかいろんな当たり前が自分の目の前で展開されるので非常に価値観の幅が広がるというおもしろさがあります。

同時に、ここに住んでいるひととか訪れるひとが生活費を出し合っているので、そこから自分の税金とか食費とかを補うことができる。自分1人で稼ぐ必要がないんです。

イメージはベーシックインカム的な家ですね。一家のおじいちゃんが良い例だと思います。おじいちゃんって働いてないけど生きていける。その立ち位置を自分でつくったんです。

それで、自分で稼ぐ必要がなくなったので時間がたくさんできるわけですよ。その時間でみんなと喋りたければ喋るし、どこかに行こうと思えば行けるし。

そんななかでアプリを開発したいと思ったんで企画してみたり、ソーシャルアクションを起こしてみたり、割りと悠々自適な働き方というかライフスタイルを実践しているわけです。

ギルドハウスから生まれたコミュニティアプリ

—アプリを企画されていると。どのようなアプリを開発されているのですか。

「まちかどギルド」というスマホアプリで、今年の8月にリリースしようと考えてます。

このアプリを一言でいうと、まちの支えあいを増やすアプリなんです。

いままでなかったジャンルのアプリになるんです。分かりやすくいうと、「ポケモンGO」ってあるじゃないですか。アプリの地図を使っていろんな場所に行くという点では同じなんですけど、まちかどギルドでは行った先でボランティアをするんです。

雪降ろしとか、要はその地域の困ったこと、助けてほしいことが登録されていて、それをクエストと呼んでいるんですけど、そのクエストをやっていくと経験値が積み重なって、アプリ上でレベルアップしていきます。

さらにボランティアって無料で働くみたいなイメージがあると思いますが、このアプリを使ってボランティアをした場合、必ず報酬をもらえるようにしています。

—報酬とは金銭的なものですか。

金銭的なもの、食材など物品でも、いろんなものが報酬になります。要は、その地域のひとたちと触れ合えるというマッチングアプリなんですね。

これを3年前くらいにクラウドファンディングに出したら4日間で目標金額に達して、すごくニーズがあるのが分かって。そのあとビジネスコンテストで入賞するなど、そういう繋がりもあって、いまようやくiOS版とAndroid版の開発に着手して8月にリリースすることになりました。

リリースすれば収益が生まれるというのもあるんですけど、それ以上にギルドと呼ばれる場所を各地につくっていって、アプリを通してギルド間でひとが動くような仕組みをつくれるとおもしろいと思ってます。アプリ片手に冒険者たちがいろんなギルドを訪ねてまわる。

こんな感じでビジョンには割りと大きな大義名分が掲げられているんですけど、自分がまちかどギルドをつくる理由は、それを使うことによって自分が1人で暮らせなくても、死ぬまで楽しく生きていける社会や家ができるからなんです。

—なるほど。アプリができるとギルドコミュニティがさらに活発になり、もっとおもしろいコミュニティができそうですね。

取材・執筆 :

シゲキ的?

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