「1日8時間・週40時間」労働は100年前にできた時代遅れの枠組み。
テクノロジーの進化で生産効率は高まり、総労働時間は減少し続けている。

労働時間の減少と「1日8時間・週40時間」の崩壊
もし、生きるために働く必要がなくなる、つまり「不労」になったときあなたなら何をするだろうか。
『CATALYST』が考える未来は、テクノロジーの加速度的進化により、ひとは労働から開放され、芸術や学問など好きなことに没頭できる世界だ。著名な未来志向の科学者やビジネスパーソンらが予想している未来でもある。
この世界は人工知能やスーパーコンピューターを中心にテクノロジーが指数関数的に進化していけば10年以内に実現する可能性があると言われている。
私たちにとって重要なのは、「不労」とはある日突然起こることではなく、いま現在も少しずつ変化している連続的なプロセスとして考えることだろう。
たとえば「労働時間」という切り口で歴史的に俯瞰してみれば、労働を取り巻く世界の流れは「不労」に向けて加速している。
時代遅れの労働基準法
現在の労働時間の基準は「1日8時間・週40時間」。月〜金曜日の9時から18時まで働き、土曜日と日曜日は休み。
多くのひとにとってこれが労働時間の常識なのではないだろうか。
しかし、これが労働時間の基準と定められたのは100年ほど前。
250年ほど前、産業革命当時の英国では1日10〜16時間・週6日労働が「普通」だったのだ。
この過酷な労働条件を改善しようと労働運動が起こり、1919年に開催された国際労働機関(ILO)第1回総会で「1日8時間・週48時間(1号条約)」労働を国際基準にしようと決められた。
その後、47号条約で週40時間制が採択された。
ILOの決定は世界各国の労働法制の基準となり、これが日本を含めた世界各国で「1日8時間・週40時間」労働が基準となった理由だ。
1日10時間以上だった労働時間が(法規上)8時間に短縮されながらも、この100年間世界各国が経済成長を続けることができたのはテクノロジーの進化が主要な要因として挙げられるだろう。
製造業では自動化テクノロジーが生産量を高めるだけでなく、生産効率を大きく高めてきた。
また、情報通信テクノロジーは製造現場だけでなくオフィスワークの生産性を高めてきた。
第1次・第2次産業革命では、蒸気機関や電力による動力を獲得したことで、大量生産が可能となった。フォード社のベルトコンベア式自動車生産システムがその代表だろう。第3次産業革命ではコンピューターやインターネットが発達し、生産管理、営業、顧客管理、人事、財務など労働の多くの部分が自動化されてきた。
そして、この100年間テクノロジーの進化と同時に起こったのが、労働時間の実質的な減少だ。
OECD労働時間統計では、この約50年間で明らかな労働時間の減少が見られる。
たとえば、日本における年間平均総労働時間は1970年には2243時間だったが、2015年には1719時間と約500時間も減少している。
米国は1950年の1963時間から2015年の1790時間、フランスは1950年の2294時間から2015年の1482時間、英国は1970年の1937時間から2015年の1674時間と各国の平均総労働時間は総じて減少している。
この平均値はあくまでも平均値。統計値の特徴を正確に捉えるには、データの分布なども考慮する必要があるが、ここで重要なのは労働時間が減少しているという大きな流れを捉えることだろう。
人工知能・スーパーコンピューターの進化とともに「第4次産業革命(新産業革命)」が起こると言われている。
それがもたらすインパクトは過去の産業革命以上になるというのが大方の見方だ。
この流れのなかで100年前にできた「1日8時間・週40時間」という枠組みは崩壊しつつあり、労働時間は新しい働き方の登場とともに変化し始めているのだ。
6時間労働の導入が国内外で増加
実際CNNは、スウェーデンでは1日6時間労働を取り入れる企業が増えていると報じているし、日本でも6時間労働を導入する企業がでてきている。
また、働き方の多様化が進み、自分の好きなことを中心に生計を立てるひとが増えていることも見逃せない流れだ。
このようなひとたちの働き方には「1日8時間・週40時間」とい概念はまったくなく、多くが好きなときに働くというスタイル。
これから『CATALYST』にも登場するサーファー向け不動産屋やプラットフォームを通じた写真販売で生計を立てるフォトグラファーは次代を先取りしたライフスタイル・働き方を実践している。
労働時間が減り、さまざまな働き方が可能になったときあなたならどうするだろうか。
すぐ先には「不労」が待っている。
いまから考えても早すぎることはないだろう。

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