松田卓也氏が語るー宇宙人はすでにシンギュラリティを起こしたかもしれない#01

2017.1.20

なぜ宇宙人を見つけられないのか。
それは、宇宙人はすでにシンギュラリティを起こし、コンピュータのなかに入ってしまったからかもしれない。
こう話すのは、宇宙物理学者・理学博士で神戸大学名誉教授の松田卓也氏だ。
松田氏は、シンギュラリティを議論する「シンギュラリティサロン」を主催するなど人工知能に関する情報発信で精力的活動する人工知能研究家のひとりでもある。『CATALYST』監修役の渡辺が、3回に渡り松田氏の人工知能論に迫る。
第1回となる今回は、宇宙物理学者が人工知能を研究する理由、そして、ある天才との出会いで見えた日本の人工知能の可能性について。

宇宙物理学者が人工知能にはまった理由

渡辺 健太郎(以下渡辺):松田先生は宇宙物理学が専門で、いまは人工知能の研究をされている。どのような経緯で人工知能には興味を持ったのでしょうか。

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松田 卓也(以下松田):ぼくが「シンギュラリティ」と言い出したのは2012年くらいから。なんでそんなことを言い出したかというと、宇宙物理学でスパコンを使って数値シミュレーションをよくやっていたからなんです。スパコンへの愛着があったんですね。

人工知能そのものはSF映画から興味を持つようになって。「ハードSF」というシリアスに科学を描写したSF映画が大好きなんですよ。

渡辺:ハードSFというとアイザック・アシモフの作品とかそうですか?

松田:そうですね。典型的なのは『2001年宇宙の旅』。
『スターウォーズ』なんかは、ハードSFの反対の「スペースオペラ」に分類されます。
ハードSF映画の世界では人工知能は当たり前の世界なんです。

渡辺:なるほど。SFだと宇宙の話だけでなく、人工知能もでてくる。

松田:宇宙物理学者として宇宙人にも興味があったんです。
宇宙人を見つけるための科学分野「SETI(地球外知的生命体探査)」というのがあって、これ自体は1960年代から始まっているんです。

その分野で、宇宙人のいる確率を計算するドレイクの方程式というのがあって、惑星ができる確率、生命が発生する確率、知的生命が発生する確率、文明が発生する確率とかをかけていくんですよ。ところが、一番大きなファクターがあって。それが何かというと「文明の継続期間」なんですよ。

この宇宙には1000億の銀河があるといわれているんです。たとえば宇宙人が10万光年離れた星にいるとして、やつらが電波を出している、するとこちらも同時に電波を出す必要がありますよね。光の速度で10万年ですけど、宇宙の年齢が100億年と考えると10万年なんかほんの一瞬のことです。

交信の可能性は宇宙人が何年電波を出しているか、要は文明が何年続いているかということに依存するわけです。宇宙人の文明が永遠にずっと続いていれば、非常に高い確率で交信できるはずなんです。
だけど、こっちの文明は電波を出し始めてから100年ちょっとだけ。

あと何年人類が続くのかという問題もあるわけですよ。
仮に100年とすると、100億年の100年だから1億分の1になってしまう。ここで確率がぐっと下がってしまうんです。

多くの識者は宇宙人文明の寿命をわれわれの寿命と同じ程度と仮定し、これを1万年とか10万年とか100万年とか言うんですが、ぼくはそんなことはないと思っていて、よくて1000年、もしかすると200年くらいかもしれない。
だとしたら、宇宙人が見つからない説明がつくんです。

宇宙人はいるはずなのに、まだ遭遇できていない矛盾を「フェルミのパラドックス」というんですけど、ぼくはその答えの1つが宇宙文明は比較的早く滅びるからなんだと思うんです。

もうひとつは、宇宙人はシンギュラリティを起こすという可能性。
宇宙人はすでにシンギュラリティを起こし、コンピュータのなかに入ってしまったから見つからないのかもしれない。

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渡辺:宇宙人がすでにシンギュラリティを起こした。それは面白い説ですね。

松田:宇宙人がシンギュラリティを起こすと、超コンピュータをつくってそのなかにマインドアップロードして、そのなかにある楽しい世界に入ってしまって、外の世界に興味を失ってしまうことはあり得ると思うんです。

地球でもシンギュラリティが起こって、人間がコンピュータのなかにある楽しい世界に入ることができれば、外の世界に興味を失ってしまうこともあり得ますよね。

わざわざ火星に行く必要はない。
すぐそこに楽しい世界が近くにあるのに、なんであんなところに行かなあかんねんとなりますよね。

『マトリックス』のように仮想現実のなかで生きている世界ですね。
まあ、あれはアメリカ的映画で、コンピュータに支配されるのはいやだといって、モーフィアスが潜水艦をつくって独立を企てるんですけど、そのなかで裏切り者のサイファーというやつが、仮想現実でもいいからジューシーなビフテキを食べたいというシーンがありましたよね。
こんな潜水艦のなかでまずいもの食べているよりは、嘘でもいいからビフテキを食べたいと。
ぼくはこっちの方が正しいと思うんです。

まあ、これはアメリカ的な自由が大事だという哲学に反するからあかんってなるんですけど。

渡辺:なるほど。宇宙人はすでにシンギュラリティを起こしていて、地球人にはもう興味がないと。

松田:猫に例えたら、地球人はまだ子猫の段階で好奇心が旺盛なんですよ。でも、親猫になったら好奇心を失う。シンギュラリティを起こすと親猫になるということなんだと思います。

渡辺:この世界はすでに仮想現実であるかもしれないという説もありますよね。

松田:ニック・ボストロムというオックスフォード大学の哲学教授のシミュレーション仮説ですね。
あれは面白いですね。この世界がシミュレーションではないと否定できないことを証明している。

シミュレーション仮説についてはこちら

ある天才との出会いで見えた日本の可能性

渡辺:シンギュラリティの起こるタイミングについて、人工知能の世界的権威レイ・カーツワイル氏は2045年と予想していますが、松田先生はいつごろ起こるとお考えですか。

松田:2029年頃だと思います。

渡辺:PEZY Computingの齊藤元章さんも2030年頃と予想されてましたね。

松田:実際に手を動かしているひとたちはシンギュラリティの年を後ろ倒しにしたがるんですが、齊藤さんはまったく逆で先にもってくるんですね。
それだけ自信があるということ。なんでも願えば、言えば実現すると信じている。

渡辺:松田先生が主催されている「シンギュラリティサロン」でも齊藤さんが講演されてましたね。

松田:彼に初めて会ったのは2015年7月。
ぼくがブログで「森君とギリシャの神々による世界征服と超知能への道」という小説を連載しているんですけど、齊藤さんがモデルで出ているんですね。
それを見た彼から「これ私でしょ?」って連絡が来て。

大阪で会う機会があって話を聞いたんですけど、まあ天才ですね。
彼の話に圧倒されましたね。
最初会ったときは、彼は小脳タイプのコンピュータを作りたいと言っていたのですけど、ぼくが大脳をやらないと世界は変わりませんよと言ったんです。

そしたら、大脳をやりますって。1000億個のコアーと100兆個のインターコネクトをもつ脳型コンピュータをつくると。
人間の脳には1000億個のニューロンと100兆個のシナプスがある。
それと同等の脳型コンピュータを作るっていうのです。

でもシリコンチップでできたコンピュータは人間の脳より10億倍は速い。
だから齊藤さんの脳コンピュータは人間の10億倍速い計算ができるというのです。
この恐るべき話に、これは画期的だなと思いました。そこから最大限、齊藤さんをプロモートすることにしたんです。

渡辺:齊藤さんのお話を聞くと日本もまだまだ可能性があると感じますね。

松田:専門家は日本の人工知能はもうだめというし、確かに日本は閉塞状態ですけど、齊藤さんが風穴を開けると思います。
彼はもともと医者で、スパコンとか人工知能に関してはまったくの素人だった。
でも徹底的に研究して専門家が無理といったことに挑戦している。

専門家はだめというけど、やれると思いますよ。だからぼくも勉強しているんですよ。

第2回となる次回は、シンギュラリティ後の世界、人工知能が政治を行う可能性、そしてそれが人間の政治より優れているという理由について松田氏が語る。

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