松田卓也氏が語るー2029年人工知能が人間を凌駕するとき私たちは支配されてしまうのか#03

2017.1.20

2029年に汎用人工知能が登場し、人間の知能を超えた存在「超知能」になる可能性があると唱える神戸大学名誉教授、松田卓也氏。
人間を超えた超知能は、意識を持ち人間を支配する脅威になってしまうのだろうか。
いま私たちが考えるべき人工知能のあり方について、松田氏が考える超知能像からその答えを模索する。

人工知能に感情が必要ない理由

渡辺:松田先生はシンギュラリティ2029年に起こり、人工知能が人間を超え「超知能」になると予想されていますが、この超知能はどのような存在になるのでしょうか。人間を支配するようなことも起こり得るのでしょうか。

松田:オックスフォード大学のニック・ボストロム氏やスティーブン・ホーキング博士は、人間を超えた超知能が脅威になる可能性を警告しているんですけど、これは人工知能を人間そっくりにつくるという前提があるから脅威を感じるだけで、ぼくはそうはならないと思っています。

日本でも、汎用人工知能は意識や感情を持つのかとか、いろいろ議論されてますけど、ぼくはこういう議論は人間中心主義であると言いたい。

渡辺:人間中心主義と言いますと。

松田:知能を人間の物差しで考えることです。
いまからつくる汎用人工知能を人間そっくりにつくる必要はないんです。

これからできるのは、人間とはまったく違うもので、異なった価値観を持っている知能だと思います。

囲碁の例だと、アルファ碁がイ・セドル九段を破ったのは有名な話ですが、あれは人工知能が人間が見えていない囲碁空間を認識できとるということなんですよ。人間の囲碁空間から外れている。つまり人間の常識が通用しない。

渡辺:人間は超知能の価値観を理解できないということですか。

松田:そうですね。超知能の知能空間は人間の知能空間をはるかに凌駕するので、人間の理解の範囲を超えると思います。

人間と超知能の知能空間が重なる部分もあるんですけどね。それは、理性、合理性、論理性。ぼくに言わせればもっとも人間らしい部分。

渡辺:すると人間と超知能が共有できない部分は感情とかになるのですか。

松田:そう、感情、つまり愛、恐怖、美とか人間の人間たる所以と言われている部分。
でも多くのひとはそこを間違っている。これらは動物的な部分で、人間の本当に人間的なところは理性なんですよ。

渡辺:感情とか愛が人間の人間たる所以とよく聞きますが違うのですね。

松田:人間の脳は大きく3層に分かれていて、進化の過程で一番古くからあるのが脳幹。これは息をする、心臓を動かす、水を飲むとか生存に関わるところ。

その上にあるのが辺縁系と呼ばれる部分で、これが感情を支配しているんですよ。
感情のなかで一番重要なのが恐怖とか怒り。これは個体保存に重要なのです。
逃げるか戦うかを決めるのがこの感情です。あと愛という感情は性欲からきている。
これは種族保存に重要です。つまり感情は個体保存、種族保存に重要なものです。

だから、感情は動物的なんですよ。

人工知能をつくるときに、これらがいるのかということです。
人工知能にオスとかメスとかいらない。生殖するなら、コピーしたらいいだけやないですか。性欲もいらない。だから愛もいらない。愛しているふりはできるけど、心から愛していない。心がないから。

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渡辺:なるほど。支配される・されないというのも、恐怖という感情からくる部分が大きいので、感情を持たない場合、人工知能が恐怖から人間を支配することもない。

松田:そうですね。
絵画や音楽、芸術も感情的な部分が関わるし、普遍的な美というのも存在しない。

人間が見える可視光はいろんな波長のほんの一部。
赤外線で書いた絵画は人間に見えないし、超音波で作った音楽を人間は聞くことができない。でも人工知能は理解できるんですよ。

超音波でつくった音楽、例えば波長が100分の1になるとベートーヴェンの交響曲とか1分以下で終わるわけです。人工知能はその1分で「感動した!」って、人間にとってはなんやねんそれってなりますよね(笑)

昔、恋人時代のうちの奥さんと「普遍的な美はあるのか」ということを蒸気機関車に引かれる列車のなかで議論したことがあって。奥さんは文学部の国文学科で、普遍的な美はあると主張していて、ぼくはそれは相対的だと反論したんです。地球人が感じる美と火星人が感じる美は違うだろうと。最終的にぼくが論破したんですけど、奥さんに最強の手を出されて・・・

泣いて別の車両に行ってしまったんです。(笑)

まあ、とにかく人工知能に感情を持たせて人間そっくりにする必要はないということです。泣かれても困りますし。

渡辺:技術的にそっくりにできるのかという問題もありますね。

松田:人間のセンサーは五感ですけど、超知能はもっとたくさんのセンサーを持っている。
株価、世界中のツイッター、天気とか膨大な情報を把握できます。ぼくはこれを百感と呼んでいます。
こんなすごいセンサーがあるのだから味覚とか嗅覚はどうでもいいんじゃないかと思うんです。

超知能で人間の能力を拡張する未来

渡辺:超知能が出てきたとき、人間との関係はどのようなものになるでしょうか。

松田:人間中心主義のひとたちが考える汎用人工知能って、要はドラえもんなんですよ。ネコ型ロボットとか言うけど、人間と話が通じるでしょう?

ぼくが考えているのは、そういう物理的な存在ではなくて、サーバ上に存在するものなんです。
そのサーバ上の機械知能と人間が一体化して、人間が自分の知能を強化できる。そういうのがよいと思うんです。それで「知能増強」ができるんですよ。

渡辺:どのように人間とサーバがつながるのですか。

松田:いろんな方法があると思います。たとえば、単純にはメガネとかコンタクトレンズを通してサーバにアクセスするとか。

レイ・カーツワイル流に言うのなら脳のなかにナノボットを入れて、それを介してサーバにアクセスする。
イーロン・マスクは脳にレースを入れると言っている。

もちろんサーバ側の機械知能には、愛も感情もいらない。当然性欲もいらない。そんなものは人間が持っているのだから。

渡辺:そのサーバのなかで意識が勝手に生まれることは起こり得るのですか。

松田:可能性はあります。
ただし、人間が意識や自由意志を本当に持っているのかどうかという問題があるんです。

意識に関しては日本でも慶應義塾大学の前野隆司先生が「受動意識仮説」を唱えていて、意識はそんなに大層なものではないという。
西洋的な考えでは意識というのは重要な概念です。意識が一番上にあって自分の行動をコントロールしていると考える。

でもそうでもないらしい。

神経科学の分野で、そもそも自由意志というものは存在しないという実験もあるのです。
これで西洋の自由意志論者は困っているわけですよ。
普通はコップを持とうと思ってから手を動かす、と考えますよね。
でも、実験で明らかになったのは、手を動かしてから持とうと思っているということなんですよ。

自分がなにか行動したら、それをやったのは自分だと脳が錯覚させとるということです。
そういう説もあるので、意識や自由意志というのは大したものではないということです。

まあどちらにせよ、人工知能をつくるときにわざわざ意識を持たせる必要があるのかということ。
人間が意識を持っているのであれば、人間が超知能をコントロールしたらいい。そして自分が超人間になったらいいんですよ。

もし汎用人工知能がドラえもんのようになっても、すごいことだけど、世の中ちょっとしか変化しないでしょ。ドラえもんってそんなに賢くないですし。

でも超知能ができると大変化が起こります。
思考のスピードと深さが人間を圧倒的に凌駕するので、思考の速さは例えば人間の10億倍です。

しかし思考が深いというのがポイントで、人工新皮質の領野階層を増やすことで、人間の何倍も深い思考ができるようになる。

こうなると、人間には想像もつかないほど抽象的なことが考えられるようになる。
京都大学の望月新一先生の「ABC予測」を解明する「宇宙際タイ匕ミューラー理論」というのがあるんですけど、これが世界中だれも分からない。望月先生以外。

去年オックスフォードでこの理論を解明する国際会議があったんですけど、望月先生行くの拒否したんですよ。
そのまま国際会議は開催されたんですけど、やはり分からないものは分からないとなって(笑)

つまり、世界でたった1人しか分からないような難しいことはあるんですよ。それでも人類で1人だけは分かってると。
だけど、そのうち超知能ができたら人類でだれも分からないようなことを超知能は分かるようになるかもしれない。

そうなると恐ろしいですよね。
その超知能が意識を持って人間を支配したら困るから、人間と一体化させて人間がコントロールするんです。
そうすればそれほど脅威ではないですよね。

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