メキシコ大使館直伝 スーパーフード 「ノパール」とそこに息づくメキシコ文化 #02

2017.1.19

全5回に分けて特集するメキシコの食べ物と文化について。知られざるメキシコの魅力をメキシコ大使館直々に取材し「ノパール」という食物の魅力を伺った。

メキシコの伝統料理

2010年、メキシコの伝統料理は、フランス料理や地中海料理と並び、食の分野では世界で初めて、ユネスコの無形文化遺産に登録された。

メキシコ料理は、様々な種類のトウモロコシとチレ(chile: 唐辛子)、ノパール(Nopal: ウチワサボテン)、昆虫、カカオ、シーフード、フルーツなどの多様な食材を用いて複雑な味を作り出す。日本料理は、ごはんとおかずを交互に口の中で咀嚼することで味を完成させる「口内調味」である

一方、メキシコ料理は一口で奥行きのある味を作りだす。

メキシコの独立記念日(9月15日)に食べる「チレス・エン・ノガーダ(Chiles en Nogada)」というお祝いの料理がある。大きく辛味の少ないチレ・ポブラーノ(唐辛子でピーマンに近い)に、挽き肉、リンゴ、レーズン、アプリコット、ナッツを詰めて揚げたものに、すりつぶしたクルミと生クリームの真っ白なソースをかけた料理だ。さらにコリアンダー、ザクロをトッピングし、白、緑、赤の三色でメキシコの国旗色を表す。

Image titleチレス・エン・ノガーダ(ICEJ提供)
メキシコも日本と同様に、行事や月ごとに食べる料理を通じて、一年の移ろいを感じることができる。

メキシコの人々は、おもてなし料理に手間と時間をかける。たとえばチレス・エン・ノガーダのチレは、表面の薄皮をむく。ピーマンの薄皮をむくと思っていただきたい。日本人からすると薄皮があってもなくても、あまり変わらないのでは・・・と思ってしまいそうだが、メキシコの友人に言わせると薄皮の食感が気になってしまうのだそうだ。

またソースのクルミの薄皮も一つ一つ丁寧にむくことで、渋みがなく真っ白なソースに仕上げる。

Image titleクルミの薄皮をむく様子(ICEJ提供)
とても繊細な料理であり、かつ、日本料理にはない新しい味の世界が広がる。

メキシコ料理、そしてメキシコ発のスーパーフードの魅力をさぐるべく、カルロス・アルマーダ駐日メキシコ合衆国全権特命大使とマーラ・マデーロ大使夫人に話を伺った。

ユネスコの無形文化遺産である「メキシコの伝統料理」

山本(荒川)真希、(以下 山本):メキシコの伝統料理が無形文化遺産に登録された理由を教えてください。

カルロス・アルマーダ駐日メキシコ合衆国全権特命大使(以下 大使):古代から伝わる農法や調理技術、祭礼や儀式を含む包括的な食文化モデルが評価されました。伝統料理のベースとなる食材は3つ、トウモロコシ・フリホール(インゲン豆)・チレ(唐辛子)です。それらの栽培には、ミルパ(焼き畑農業)、チナンパ(浮島の上に湖底の泥を盛り上げて作る、湖上の畑)、ニシュタマリゼーション(穀物のアルカリ水処理)など、環境に調和した伝統農法を用います。

Image titleカルロス・アルマーダ駐日メキシコ合衆国全権特命大使
メキシコは調理法においても、世界に類をみない独特の調理器具を用いています。たとえばメタテやモルカヘテといった器具です。メタテは食材をすりつぶす石でできた板状の台です。モルカヘテは石臼状のすり鉢で、これでグァカモーレ(アボカドのディップ)やサルサ(ソース)を作ります。

Image titleメキシコ政府観光局とのメキシコ食文化セミナーにて、メキシコ大使公邸シェフ ビクトール・バスケス氏の調理デモンストレーション。モルカヘテでグァカモーレをつくる。(ICEJ提供)
山本:日本でポピュラーなメキシコ料理といいますと、タコスがあげられます。

大使:メキシコ人にとってのタコスは、日本のお寿司のようなものです。主食であるトウモロコシでつくるトルティーヤに、様々な具を包んで食べます。バラエティ豊かなタコスはまさにメキシコのソールフードです。メキシコは多様な地形や気候を持ち、地理的に絶好のロケーションに恵まれています。
乾燥した広大な大地やジャングルのような緑あふれる地域では、採れる食材も異なります。日本と同じように各地域に郷土料理があります。

山本:メキシコは世界的に広く用いられている農作物の原産地でもありますね。

大使:トマト、カボチャ、アボカド、カカオ、バニラといった農作物も、メキシコ原産です。15世紀にスペインがヨーロッパに持ち帰ったことで、世界中に広がりました。日本が輸入しているアボカドの約9割がメキシコ産です。

古代より食用・薬用として用いられているノパール

山本:ノパールとは、ウチワサボテンのことですね。

大使:ノパールは食用と観賞用あわせて300種類以上あります。メキシコやアメリカ大陸が原産で、北米からパタゴニアにかけての乾燥地帯に自生しています。農作条件の悪い土地でも育ち、寒暖の気温差に負けない生命力があります。

Image titleメキシコのノパール畑(駐日メキシコ大使館提供)
ノパールは我々メキシコ人の食卓に欠かせない食材です。それは国章のモチーフにもなっており、ノパールの上で鷲が蛇を加えています。これはアステカ帝国の建国神話に由来しています。

Image titleメキシコの国旗
山本:生のノパールのシャキシャキしてヌメリのある食感、インゲンのような青い香りと酸味が大好きなのですが・・・特に、蒸し暑い日本の夏にはサッパリと食べることができます。メキシコのみなさんはノパールをよく召し上がるのでしょうか?

マーラ・マデーロ大使夫人(以下 夫人):はい、メキシコ人は毎日のようにノパールを食べます。市場やスーパーマーケットで、新鮮なノパールが安く手に入ります。ノパールはトゲがあるのですが、トゲを取り除いた状態で、細かくカット加工したものも購入できるので、買い物から帰宅後、すぐに調理することができます。

Image titleマーラ・マデーロ大使夫人
山本:メキシコではノパールをどのようにして食べるのでしょうか?

夫人:生のまま食べても美味しいです。ノパール・サラダ(茹でたノパールをトマトや玉ねぎと合わせたもの)は、メキシコではポピュラーな料理です。グリルしたノパールステーキもありますし、チーズを詰めてグリルした調理もあります。ノパールを練りこんだビスケットも市販されています。スムージーとしても飲みますし、アイスキャンディ、ジャムにも加工されています。

Image titleメキシコの皿に盛られた伝統的なメキシコ料理の例。手前左がノパール・サラダ、時計回りにチレ・ワヒーヨの白身魚のグリル、グァカモーレ とトルティーヤチップ、メキシカンライス(ICEJ提供)
山本:ノパールは様々な健康効果があるようですね。植物が過酷な環境で生育できるということは、自らを守るための有効成分をつくりだしています。そういった成分は、我々にとっても有益です。

夫人:ノパールは美味しく食べられる健康食材です。昔(先スペイン期)から食用だけでなく、民間薬としても用いてきました。様々な健康効果がありますが、たとえば糖尿病、高血圧、動脈硬化、便秘などに有効です。健康食品としてパウダータイプのものや、錠剤もあります。ノパール・パウダーはジュースにミックスしたり、手軽に摂取できたりします。

Image titleメキシコ大使館内でのインタビューの様子
山本:メキシコ以外でもノパールを見かけますが、他の地域では食用とされているのでしょうか。

夫人:ノパールを食べるのは古代から続くメキシコ特有の食文化です。トゥナ(Tuna)とよばれるノパールの果実は、メキシコ以外の多くの国や地域で消費されます。

メキシコの伝統工芸品

メキシコは地域毎にそれぞれ特色のある伝統工芸品がある。大使公邸で見せていただいたものをいくつかご紹介しよう。

Image titleTree of Life(メキシコ州)
旧約聖書・創世記に登場するエデンの園に植えられたTree of Life(árbol de la vida: 生命の樹)をモチーフにした土の彫刻。中央に蛇、その両脇にアダムとイブ、上部にイエス・キリストが表されている。
メキシコでは15世紀にスペインがキリスト教を持ち込んだことで、国民の約9割がキリスト教(ローマ・カトリック)教徒である。

Image titleジャガーマスク(ナヤリット州)
先住民族ウイチョル族のビーズを用いた伝統工芸品。ジャガーをモチーフにしている。

Image titleアレブリヘ(オアハカ州)
先住民族サポテカ族による空想の生き物の木彫り人形。手描きでカラフルに色付けしてある。

次回はアルマーダ大使夫妻のインタビューと共に、メキシコ大使公邸シェフ ビクトール・バスケス氏によるノパールの調理法、大使公邸でいただく洗練されたモダン・ノパール料理、そしてノパールがスーパーフードたる健康効果のエビデンスをご紹介する。

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