メキシコの食通に愛されるスーパーフード「食用昆虫」#05

2017.1.19

メキシコのスーパーフードを紹介するシリーズ最終回となる今回はメキシコと日本に共通する食文化、昆虫食について紹介する。

メキシコには、CATALYST編集部が紹介したノパール(ウチワサボテン)やアガベに加え、アマランサス、チアシード、カカオといった数多くのスーパーフードがある。

最終回となる今回はメキシコと日本に共通する食文化、昆虫食について紹介する。

日本において食用昆虫は、特に山間部で貴重なタンパク源・ミネラル源であった。現在は長野県、群馬県といったいくつかの限られた地域で昆虫食の風習が残っている。世界中で昆虫は食されており、国連食糧農業機関(FAO)によると20億人が1900種以上の昆虫を食しているという。その中でもメキシコはバラエティ豊かな昆虫食の伝統がある。メキシコにおいて農村地域では栄養源を摂取するための食物として昆虫を食べるが、都市部のファインダイニングではグルメな高級料理として提供されている。昆虫はタンパク質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンを供給できる栄養源としてだけではなく、楽しむための食材でもあるのだ。まさにスーパーフードといえる。

食用昆虫はその栄養価の高さと効率よく生産できることから、2013年にFAOが昆虫食を食糧危機の解決策として挙げ、昆虫食はいま世界的な注目が集まっているスーパーフードの一つである。

古来より続くメキシコの昆虫食文化

山本(荒川)真希(以下 山本):メキシコと日本は昆虫食という共通の食文化があります。日本では第二次世界大戦以降、一部の地域を除いて昆虫食は 極めて珍しい風習となってしまいました。メキシコではどうですか?

カルロス・アルマーダ駐日メキシコ大使(以下 大使):メキシコでは昆虫は先スペイン期から重要な食材として扱われてきました。現在では、日常的に昆虫を常食する一般家庭は減っていますが、限られた農村地域では日常的に消費されています。メキシコシティーなどの都市部では、昆虫は洗練された高級料理・珍味として、レストランなどで食べることができます。

山本:昆虫が高級食材であるとは、とても興味深いです。2015年にデンマークの「noma」が東京のマンダリンオリエンタルホテルで1ヶ月間限定のレストラン「noma in Tokyo」をオープンしました。コース料理でひとりあたり5万円強にもかかわらず、予約が殺到しました。印象的だったのは、デンマークは寒くて柑橘類が生産できないため、酸味を蟻で補うということです。「蟻酸」と書いてギ酸とよみます(化学式:HCOOH)。この名からわかる通り、蟻は酸っぱいのです。noma in Tokyoのひと皿では、ボタン海老に長野県産の蟻十数匹がトッピングされていました。仮に柑橘で酸を加えるとしたら身が酸で変質してしまいますが、蟻の場合は酸が殻で守られているので海老の身を変質することなく、食べた時に酸味を味わうことができるのです。とても理にかなっていました。

Image titlenoma in Tokyoのひと皿。ボタン海老と長野県産の蟻。(ICEJ提供)
大使:既存する食用昆虫の約2000種のうち549種はメキシコ原産であり、主にメキシコ中央部及び南部に生息しています。蟻の卵は高級食材としてとても人気があります。メキシコでよく知られている食用昆虫をいくつかご紹介しましょう。

チャプリネス(Chapulines)

Image titleチャプリネスを揚げてライムとチレ(唐辛子)で味付けし、トルティーヤに盛ったタコス(皿の右上)。(在日メキシコ大使館提供)
メキシコのバッタです。日本のように大きくなく、小さなものを食用とします。主にオアハカ州、メキシコ州、ゲレロ州で食べる習慣があります。一年を通して市場で売られており、塩水で茹でて洗った状態で店頭に並んでいます。

エスカモーレ(Escamoles)

Image titleソテーしたエスカモーレ(在日メキシコ大使館提供)
一般的には「蟻の卵」といわれますが、黒蟻と赤蟻の卵、幼虫、蛹を指します。クリーミーな白色で、米粒の形に似ています。土の中の蟻の巣から取り出します。蟻が産卵する3月~4月にのみ食べることができる季節の食材で、しかも採れる量が少ないので高級品です。食用昆虫の中でも、タンパク質含有量が高いです。やわらかい食感に、とても洗練された味であると評価されています。特に蟻の卵は高級レストランで人気の食材で、メキシコのキャビアと呼ばれています。

フミレス(Jumiles)

Image title揚げたフミレスのタコス(在日メキシコ大使館提供)
山や野原に生息するナンキンムシで、生きたまま食べる事もできます。先スペイン期では、フミレスは現世で人々と食事を共にするために、死んだ魂が死者の世界から戻ってきたものと考えられたため、死者への儀式で食べられていました。メキシコ州やモレロス州ではフミレスを使用したサルサ(ソース)も作られています。

グサノ・デ・マゲイ(Gusanos de Maguey)

Image title揚げたグサノ・デ・マゲイ(手前)。(在日メキシコ大使館提供)
アガベ(マゲイ、リュウゼツラン)の葉に生息する蝶の幼虫です。収穫時期は4月~5月までの間で、主にイダルゴ州、トラスカラ州、メキシコ州のプルケを生産している地域でとてもポピュラーです。その他にもケレタロ州、サンルイスポトシ州、オアハカ州、ハリスコ州、プエブラ州、メキシコシティーなどでも食べられています。
捕えた幼虫はミショーテ(アガベの葉の表面を薄く剥いだ膜)に包みます。グサノ・デ・マゲイは、煎るか揚げて食べます。
アガベの芯の部分で捕れる赤い色をしたグサノ・デ・マゲイもありますが、白い幼虫に比べると味がやや落ちるので値段も安価です。オアハカ州ではこの赤い幼虫をすりつぶした粉末やチレ(唐辛子)をミックスした塩が作られています。こういう昆虫ソルトは、メスカルを飲むときに一緒に味わうことが多いです。

Image title赤いグサノ・デ・マゲイやチレの入った昆虫ソルト

スーパーフードとしての昆虫食

山本:FAOが昆虫食が世界の食糧問題を解決すると報告したこともあり、世界をはじめ日本においても昆虫食が見直され始めています。どのような栄養素を含んでいるのでしょうか。

夫人:食用昆虫はタンパク質、オメガ系脂肪酸、コレステロール、そのほか脂肪、鉄分、アミノ酸といった栄養素を含んでいます。近年はその栄養特性が注目され、多く研究されています。ある研究によって、食用昆虫は100グラムあたり約80%のタンパク質が含まれることが証明されました。非常に高タンパクな食材です。昆虫はスーパーフードといえましょう。
また、病気にも効くというデータもあります。例えばフミレスは、リウマチや皮膚の発疹の改善や予防のために食されることもあります。

山本:昆虫の外観そのままだと、昆虫食の経験がない方だと苦手意識をもつかもしれませんが、メキシコのように粉末加工されていたり、サルサ(ソース)に入っていたら食べやすいですね。昆虫ソルトは色も美しく、味も良いです。

Image titleメスカルと昆虫ソルト(ICEJ提供)
大使:メキシコは昆虫食をはじめ、ユニークで多様性あふれる食、健康効果の高いスーパーフードに恵まれた国です。みなさんもぜひ味わってください、そして実際にメキシコをご訪問ください。

最後に
「古代文明より受け継がれるメキシコのスーパーフード」では、ノパール、アガベ、昆虫食といったユニークな食を紹介してきた。食はその国や地域の歴史、地理や環境、文化と深く関わっている。我々にとって未知の世界・馴染みの薄い世界の新たな魅力を、食を切り口に発掘することができる。宗教上禁忌の食材があれど、基本をおさえておけば食は万能なコミュニケーションツールだ。
テキーラ・メスカル・アガベシロップはもちろんのこと、生のノパールも日本で購入可能。ぜひともお試しいただきたい。
協力:在日メキシコ大使館、在日メキシコ政府観光局

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