Tokyo Otaku Mode 米国オフィスの中田氏にポートランドでの働き方や、現地で感じるオタクカルチャーの力、「好き」を仕事にする上で大事なことなどを語ってもらった。

Tokyo Otaku Modeとの出会い
日米を拠点に、日本のポップカルチャーを世界へ届けているTokyo Otaku Mode。
前編ではアメリカ・オフィス立ち上げからの経緯や、ポートランドとオタクカルチャーの相性などを聞いた。
後編では、北米オペレーション・マネージャー中田大樹氏自身の働き方や、「好き」を仕事にする上で大事なことなどを伺う。
—中田さんはいつ頃からTokyo Otaku Mode(以下、TOM)に関わってるんですか?
日本の大学で教職課程を取って、卒業後にポートランドの小学校で1年間日本語を教えていました。
日本に戻ってからも英語を活かせる仕事をしたかったので、日本の伝統工芸品などを販売する企業に入社し、事業部の立ち上げを行ったのですが、その事業がうまくいかず、その後、日本の小学校でバイリンガル教師として教職に戻りました。
その頃に放課後の時間を使って、まだ会社になる前のTOMをボランティアとして手伝い始めました。
伝統工芸品販売の会社の元上司がTOMの共同創業者のひとりなんです。
TOMが会社化した後に誘ってもらい、転職しました。
最初の1年は日本オフィスで働いてその後、アメリカオフィスの立ち上げに行くことになりました。
日本支社とのやり取りとコミュニケーション
—日本とのやりとりも含めて社内外のコミュニケーションや、アイデアの集約、また意思決定において特に大事にしていることは?
日本とのやり取りに関してはとにかく即レスを意識してます。1日遅れると時差の関係もあってたぶん1.5日くらい遅れちゃうんですよね。
—平日の1日の過ごし方はどんな感じですか?
朝7時くらいに起きて、9時から夕方6時が出社時間です。日本側が大体こちらの夕方4時半とか5時くらいから動き始めるので、両方のビジネスアワーが合うのが大体2時間くらいなんです。ミーティングはそこに詰めていますね。日本側のメンバーが早起きしてこっちの時間に合わせてくれたりすることもあり、すごく感謝してます。
リアルのイベントで感じた「オタクは世界中変わらない」
—中田さん自身も、もともとオタクカルチャーが好きなんですか?
実は入社当初は、そこまでオタクではありませんでした。ただ、仕事でアニメなどを見始めたら結局はまっちゃいました(笑)。
1日3本はアニメを見てますね。
ポートランド・アニメ会っていうのがあって、面白い人たちが集まるらしいのでいつか参加したいと思っています。
—最近見てるアニメは?
元々スポーツ好きなので、バレーボールのアニメの「ハイキュー!!」はとても良かったです。
それと、スポ根アニメで吹奏楽部の話なんですけど、「響け! ユーフォニアム」。この2つは僕の中では外せないですね。
—ポートランドでもコスプレイベントがありますよね。
そうですね。
10月にアニメ・コンベンションの「Kumoricon」 っていうのがありまして、そこにはオフィシャルスポンサーとして参加して、取材もしました。
—リアルのイベントでの交流もされてるんですね。反応はどうでした?
こっちの人たちがコスプレしているのを実際に見て、アニメの影響力はすごいなと改めて思いました。
Eコマースだとリアルでお客さんと会えないサービスなのでイベントなどの現場に行くと、実際の世界中のオタクに会えてとても刺激的なんです。
ああ、こういう人たちが支持してくれてるのかなと思うと嬉しい気持ちになりますね。
形のあるモノを正規に海外へ届けるのもTOMの役割
—今、世界の人たちが日本のポップカルチャーをどう見てるのか? 立ち上げの頃と比べて、取り巻く状況に変化は?
おそらく、僕がTOMに入った時から考えると、いわゆるオタクのレベルが上がってると思いますね。
SNSやインターネットが当たり前の状況になって日本でも海外でも同じレベルで情報が回るのは早いですね。
ただ、情報伝達にほとんどタイムラグはなくなりましたが、フィギアやおもちゃなど、モノだけは、日本で手に入れるのが早くて安いという状況です。
そこを解決していくのがTOMの役割だと思っています。世界のOtakuが日本のポップカルチャーグッズを、日本と同じ感覚で買えるように努めていきたいと思っています。
—TOMで扱うモノの基準はどういうところですか?
本物であることです。海外のファンは偽物に非常に敏感です。TOMでは必ず正規品を販売することをファンに向け約束しています。
モノの選定はオタク知識のある各バイヤーが行います。お客さまからのリクエストで販売した人気商品もあるんですよ。
ひとつお見せしていいですか?
—アルパカですか?
はい、アルパカッソという商品です。
これを取り扱ったきっかけは、お客さまからの問い合わせだったんです。
もともと日本ではUFOキャッチャーの景品だったのですが、海外で火が付いたようで。
お客さんのひとりが「本当にこれが欲しいんだ!」と連絡をくれました。当時は、これってOtakuグッズなのか?という思いもあったのですが、メーカーに交渉し海外での販売の契約を結びました。
そして販売したところ、アルパカッソはTOMを代表する大ヒット商品になったんです。海外のお客さまが欲しいOtakuグッズって、私たちが海外にウケそうだとイメージしているものより広義なんですよね。
まだまだ日本のいろんな商品が海外で大人気になる可能性があるなと思いました。
ネットの会社だからこそファン、お客さんとの接点をもっと多くしたい
—今後取り組んで行きたいことや、強化していきたいことは?
ファン、お客さんとの接点をもっと多くしていきたいですね。
情報発信だけだとファンの人たちに対して一方通行になってしまうので、なるべく各地のイベントに顔を出して対話ができるようにしていきたいと思っています。
僕は北米を中心に活動していますが、最終的には世界中に拠点を作ってファンの方と交流していきたいですね。
—オンライン上での今後についてはいかがですか?
オンラインだとFacebookページを運営してくれてるチームが優秀で、うまくコミュニティを作ることができています。
今後は、Facebookを通してファンとのコミュニケーションをさらに強化して、ファン同士もつなげる役割になりたいですね。
—最後に、TOMで働いてる人たちもみなさんオタクだと思いますが、好き以外に仕事としてやっていく上で大事にしていることは何ですか?
みんな「好き」を仕事にしているので自然と積極的かつ攻めの姿勢で働いていますね。
大事にしていることとしては「発信」ですね。各々が思ったことを言えるような環境づくりと発信することの大切さをメンバーには伝えています。
取材を終えて
2020年の東京オリンピックに向けて、という意味でもクールジャパン発信の担い手として期待を受けるTOM。
コミュニティ愛やものづくりカルチャーといった特徴のあるポートランドを拠点に、情報発信、日本のいいモノを海外へより多く届けたいという。今後、どのように発展していくかが楽しみだ。

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