宇宙に乗り出すシンギュラリティ大学発のスタートアップ

2017.1.20

米シリコンバレー、NASA敷地内にあるシンギュラリティ大学で毎年夏に開催される「グローバル・ソリューション・プログラム(GSP)」は世界最高峰の起業プログラムと呼ばれている。
地球規模の課題を解決しようと野心あふれる若者たちが世界中から集結し、先端テクノロジーを学び、それらを活用したビジネスを圧倒的なスピードで実現化していくからだ。
GSPでは、人工知能、3Dプリンティング、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー分野などのイノベーションが応用されたビジネスが生まれているが、こうしたテクノロジーを活用する場は地球を超え宇宙空間にまで達しようとしている。
2016年のGSPで結成されたチームが設立した「ReBeam」は宇宙技術を活用しエネルギー問題を解決することをミッションとするスタートアップだ。

ReBeam社 宇宙空間を利用して地上のエネルギー問題解決へ

日本では不自由なく使える電気だが、世界にはまだ電気を利用できない地域が多くある。
特にアフリカ・サハラ以南地域の電力普及率は低く、国・地域・生活の発展を拒む大きな障壁となっている。

一方先進国においても、増加する電力需要、再生可能エネルギーの導入、電力自給率の改善、エネルギー源の多様化など、エネルギーに関連したさまざまな課題が浮上している。

こうした電力格差やエネルギー問題の解決を目指す ReBeam社 の共同創設者でCEOのガダーダル・レッディ氏は「地球の軌道上に配置した電磁波反射装置を使い、地球上で太陽エネルギー最適配分の実現を目指す」と語る。

Image titleガダーダル・レッディ氏

再生可能エネルギーとして大きな期待を集めている太陽エネルギーだが、地球上における発電量・効率は場所によって差異がある。

地球上でもっとも太陽光を浴びることができるのは赤道で、1平方メートル当たり約1000ワットの発電が可能だ。

一方、北半球に位置する日本の太陽光発電量は、赤道における発電量の12%にしか達しないという。
ReBeam社はここにビジネスチャンスを見出した。

発電効率の良い発電所から、電磁波による無線送電技術を使い、別の発電所に電力を移動させるというものだ。

これには宇宙空間に打ち上げた電磁波反射装置を用いる。
昼の時間帯に位置する発電所で発電し、夜間で発電できない発電所に送電することで、24時間電力供給できるシステムを構築できるという。

この次世代送電システムの魅力はコストの大幅削減だ。
レッディ氏らがGSPで実施したケーススタディでは、サハラ砂漠での太陽光発電で得た電力をロンドンまで送電する場合、そのコストは既存の送電線を使うと約1500億ドルかかるが、ReBeam社のシステムを使うと2億5000万ドルと600分の1に抑えられることが明らかになった。

ReBeam社は、この次世代送電システムを今後10〜15年で構築する計画だ。

一方で、短期〜中期にかけてはドローンを使った送電システムの構築を目指す。ドローンを反射板として送電を行うというのだ。
送電される電力をドローンの飛行電力として使用することもできるため、ドローンを長時間飛行させることも可能という。

シリコンバレー、NASA、環境がビジネスを爆発的に加速させる

いずれの計画も壮大なもので、さまざまな専門知識や投資家などのネットワークが必要となる。
通常であれば非常に難しいプロジェクトであるが、ReBeamチームには自信が満ちている。

レッディ氏は、シリコンバレー、NASAの敷地内に拠点を構えていることが、通常では不可能なスピードでビジネスを進められる強みになっていると説明する。

シンギュラリティ大学教授陣からのアドバイスやネットワークを活用することで、知識と資金へのアクセスが可能となる。
実際、ワイヤレス送電で記録を打ち立てたリチャード・ディッキンソン博士がReBeam社のアドバイザーに就任したことなどからそれが伺える。

また、シリコンバレーのイベントやミートアップだけでなく、シンギュラリティ大学のエグゼクティブ・プログラムに参加する大企業CEOや投資家にアクセスできることで、資金調達の機会は十分得ることができるという。

さらに、シンギュラリティ大学発でNASA敷地内に拠点があることからリンクトインを通じたコンタクトも非常に多く、さまざまな企業や組織とのパートナーシップを組む機会もある。

レッディ氏が「通常は1年かかるものが、ここでは1カ月しかかからない」というほど、プロジェクトは驚異的な速さで進捗している。

ReBeamは今後6カ月で次世代送電システムのプロトタイプを完成させ、長期計画を実施するための資金調達を行う予定だ。

Intelligent Space社 人工知能を使って宇宙ゴミをリサイクル

シンギュラリティ大学発で宇宙を視野に入れる企業はReBeam社だけではない。

航空宇宙工学博士のクリスティーナ・テイラー氏がこのほど創設したばかりのスタートアップ  Intelligent Space社は人工知能技術を使って、地球の軌道上に漂う不要衛星のリサイクルを目指す。テイラー氏が宇宙ゴミ問題に人工知能を活用するというアイデアを得たのはシンギュラリティ大学のGSP(2016年)に参加したときだ。

Image titleクリスティーナ・テイラー氏

現在地球の軌道上には約1500基の衛星が活動している一方で、不要となった衛星が3500基も漂っていると。

また、今後5〜10年で1万2000〜1万6000基の衛星が打ち上げられる計画だ。

テイラー氏は、この「スペースデブリ(宇宙のゴミ)問題」を放置すると、既存の衛星だけでなく新たに打ち上げられる衛星が破壊される危険があり、現在の経済・社会基盤を支えるGPS、時刻、インターネットが使えなくなり、大混乱につながる可能性があると指摘する。

Intelligent Space社は宇宙ゴミのリサイクルを実現するために、宇宙ゴミを探し出すアルゴリズムなど人工知能テクノロジーを活用する。

大企業などとのパートナーシップを通じて必要となるテクノロジーを開発し、今後4年で事業を軌道に乗せる予定だ。
エクスポネンシャル(指数関数的)に進化するシンギュラリティ大学発のスタートアップ。
宇宙に乗り出す ReBeam社や Intelligent Space社が今後どのように進化していくのか注目していきたい。

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