齊藤元章氏が語るー社会に大変革を起こすプレシンギュラリティとは

2017.1.19

人工知能の世界的権威レイ・カーツワイル氏が提唱した「シンギュラリティ」。
人工知能が人類の能力を超える境界点のことだ。
このシンギュラリティが起こる前に社会を大きく変革する「プレ・シンギュラリティ(社会的特異点)」が起こると提唱するのがスーパーコンピューター開発企業Pezy Computingの代表取締役、齊藤元章氏。
9月28日ワークスアプリケーションズ主催の「COMPANY Forum2016」で、プレ・シンギュラリティが起こす社会変革について語った。

プレシンギュラリティが起こす社会変革とは

齊藤氏が提唱するプレシンギュラリティとは、衣食住がフリーになり、軍事、資源、食糧など人類が抱える問題がすべて解決し、生活のための労働がなくなり(不労)、老いもコントロールできる(不老)世界だ。

「これまでの人類の社会常識や価値観がすべて覆され、既存のすべての前提条件が成立しない状態」というのがプレシンギュラリティの本質的意味という。

このようなプレシンギュラリティの世界は本当にやってくるのか。

齊藤氏はエクサ(1エクサ=現在のスパコンの100倍の能力)レベルの次世代スパコンが登場することで、これらが現実になると説明する。

社会変革で最初に起こるのはエネルギーが自由に使えるようになること。小型核融合炉、人工光合成、蓄熱物質など新エネルギー技術を次世代スパコンでのシミュレーションで、一気に実用可能にできるという。

プレシンギュラリティでは、エネルギーがフリーになると植物工場などでのエネルギー問題が解消し、食糧もフリーになっていく見通しだ。

次世代植物工場の技術を使うと、米を2週間に1回収穫することが可能になったり、LED光源の波長をコントロールすることで特定の栄養素を多く含んだ機能性野菜などを大量に収穫したりできるようになるのだ。また植物工場での米生産で出るワラなどを使うことで牛や豚の養殖もできるようになる。

さらに植物工場の生産過程で出る繊維を使うことで衣料生産のコストも下がり、いずれフリーになるという。化学繊維に関しても、エネルギーがフリーになることで化石燃料の消費が激減するため、ほとんどコストをかけずに入手することが可能になる。

植物工場が高効率で稼働するようになると限られた土地でも十分な食糧生産が可能になり、これまで農地だった土地が宅地として供給され、都心などの特殊な場所を除いては、土地の価格が下がっていきいずれフリーになる。原油価格がほぼゼロなので、建築資材のコストもほとんどかからない。

軍事については、各国が人工知能機能をもった軍事用コンピュータ・ウイルス開発を競っており、侵入され制御不能になる可能性があり旧来の大量破壊兵器を持つことがリスクになる時代になるという。

いまではこの軍事技術はかなり進化しており、侵入できないネットワークがないというところまできているという。
齊藤氏は

「次世代のスパコンが実現すると、エネルギー、資源、食糧、軍事、すべての問題がどんどん解決していきます。今延長線上に何が起こるかという、保有するスパコンの数が国力と言わざるをえないような時代が間もなく来るでしょう。」

と語った。

このようにプレシンギュラリティでは、あらゆるものがフリーになり人間は働かなくてよい「不労」を手に入れる。さらには、スパコンで老いのメカニズムを解明し、老いをコントロールし「不老」を手にいれることができるのだ。
また、齊藤氏はプレシンギュラリティが実現した社会について

「日本人にとっては、穏やかで平和で豊かな国として描かれた『瑞穂の国』という原風景に近いものではないかと思います。これを世界中に伝播させてたいと考えています。」

と語った。

中国への対抗策とシンギュラリティに向けたプロセス

齊藤氏は、中国のスパコン・人工知能開発の勢いが他国を圧倒するものになっており、日本は一丸となり対抗していく必要があると指摘する。

中国は現在、3種類のエクサスケールのスパコンを同時開発しており、2019年に1台、翌年20年に2台を立ち上げる計画だ。日本は22年に延期、米国は23〜24年の立ち上げ予定と中国から遅れをとっている。

Image title中国のスパコンの台数推移

さらに、17年までに世界中で立ち上げる先端半導体工場19カ所のうち、10カ所が中国で立ち上げられるという。中国は今後5年間で10兆円以上の投資を行い、半導体自給率を現在の25%から75%に高める狙いがあるのだ。

人工知能開発でも中国は3年間で1兆8000億円と日本の人工知能開発投資額500億円を大きく上回ることや、スタートアップ投資でも差が拡大していることも直視すべきという。

一方、齊藤氏は自社で開発するスパコンが中国に先がけ2018年末にはエクサレベルに到達することに加え、今後18カ月以内に次世代人工知能エンジンの開発を完了する見通しがあることを明らかにし、中国に対抗できる可能性を示唆した。

その上で、プレシンギュラリティの先に起こるシンギュラリティへ向かう工程についても説明を加えた。
まず、プレエクサスケールのスパコン(100ペタフロップス)を早急に立ち上げ、これにより物質材料科学を急速に進展させる。

次に、新しい人工知能エンジンを開発し、新産業革命を起こし、日本国家としてこの先必要な財源を確保する。
そこからエクサスケールを完成させ、プレシンギュラリティに向けて軍事、資源、食糧などすべての問題を解決でき、不労と不老を手に入れる社会を実現。

次世代スパコンで人間の脳の機能を解明し、脳のメカニズムをハードウェアに落とし込み、アルゴリズムを発展させ、汎用人工知能を完成させる。そしてその進化によってシンギュラリティが実現する。

その先にレイ・カーツワイル氏が提唱する第5段階、第6段階の進化が実現するというのだ。

齊藤氏は講演の最後に

「カーツワイル先生に昨日会うことができまして、著書に『Keep contributing to The Singularity(シンギュラリティに向かって引き続き尽力してください)』という言葉をもらいました。これからも日本のたくさんの方々と、シンギュラリティに向けてがんばっていきたい。」

と抱負を語った。

シンギュラリティの到来で変わるわれわれのライフスタイルに関してはこちらから。

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