「シンギュラリティ」をどう考えるか AI・ロボティクス、そしてその先へ

2017.1.19

「8億ドル(約900億円)」。
これはAmazonが100カ所以上の流通センターにロボットを導入し、倉庫を自動化したときに削減できるとされるコスト額だ。
Amazonはすでに世界中の倉庫で3万台のロボットを稼働させており2200万ドル(約24億6000万円)のコスト削減に成功しているという。

シンギュラリティの可能性

このようにロボットの導入は作業効率改善やコスト削減など企業にとって大きなメリットがある。実際、Amazonだけでなく小売やサービスなどにもロボットが導入されるケースが増えてきている。

ロボット活用の背景には人工知能の進化があることを忘れてはいけない。人工知能が進化したことで、これまで人間しかできなかった作業がロボットでもできるようになったのだ。

といっても人工知能はまだまだ発展途上。人工知能が進化していけばロボットは、より高度なタスクをこなすことができるようになる。

一方で、人工知能が進化を続けていけばいずれ「シンギュラリティ」に到達する可能性があり、それを見据えた議論が必要なのも事実だ。

そんな未来を見据えたシンポジウム「シンギュラリティ “AI, Robotics and Beyond” 」が11月19日に東京ベルサール六本木で開催された。これはシンギュラリティ大学が日本で初めて開催する「グローバル・インパクト・チャレンジ」を促進するイベントでもある。

登壇者は、北野宏明氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所・代表取締役社長)、齊藤元章氏(PEZY Computing 代表取締役社長)、高橋恒一氏(理化学研究所・生命システム研究センター)、ジョバン・レボレド氏(エクスポネンシャル・ジャパン代表)と先端テクノロジーのパイオニアたちだ。

シンギュラリティをどう考えるべきか?

「人工知能が人間を抑圧・管理するかもしれない」。

スティーブン・ホーキング博士、ビル・ゲイツ氏、イーロン・マスク氏などが論じた人工知能脅威論。
シンポジウムのパネルディスカッションでは、このような人工知能脅威論で思考停止するのではなく、人工知能の進化を冷静に見つめ、シンギュラリティをどう考えるべきか、というテーマで議論が盛り上がった。

北野氏は、シンギュラリティはすでに起き始めており、避けられないプロセスと語る。チェスや囲碁などで人工知能がプロに勝利したことは始まりに過ぎず今後さらに高度になっていくという。

「人間は変化に対する恐怖感があるから、そういう話(人工知能脅威論)が出て来る。
イーロン・マスク氏は人工知能脅威論を論じた一方で、テスラで自動走行をやっている。(人工知能脅威論を)ポジショントークで言っているときがあるので、フェイスバリューで捉えるのではなく、冷静に考えた方がよい」(北野氏)

Image title北野宏明氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所・代表取締役社長)

齊藤氏も「人工知能脅威論的な話はまったく心配しなくてよい」と語る。
一方で「(シンギュラリティに至るまでの)過渡期は大変で、ここをうまく乗り越えていかなくてはならない。だからプレシンギュラリティが大事になってくる」と主張した。

「シンギュラリティは人類だけでは到達できないところまでわれわれを導いてくれるものだと思います。一方で、いまはまだまだシンギュラリティを理解したり議論したりする場が足りない。そのような場を草の根的にだけでなく、先進的にいろんなことをやり始めているシンガポールのように国がリードしてつくっていくことが重要だと思います」(齊藤氏)

Image title齊藤元章氏(PEZY Computing 代表取締役社長)

齊藤氏の意見に北野氏も同調。
「人間が人工知能を使いこなせないという議論が脅威論の1つになっている。しかし一方で、人間はまだ車も使いこなせていない。交通事故で毎年何万人ものひとが亡くなっている。自動走行ができるようになって人間は初めて車を使いこなせるかもしれない。だから、シンギュラリティが来てわれわれは初めて生き延びることができるかもしれないということです」(北野氏)

人工知能研究者の高橋氏は「シンギュラリティは必然」と述べた上で、正しい問いかけをすることが重要と語った。
高橋氏が提唱するのは「いいシンギュラリティを作り上げるにはどう考えるべきか」という問いだ。

Image title高橋恒一氏(理化学研究所・生命システム研究センター)

「人工知能がビッグ・マザーコンピューターを持っていて、これが人類を敵とみなすと人類が全滅するという考えではなく、いろんな文化背景、価値システム、歴史を持った人工知能がネットワークで相互に絡み合っていくことで、仮に1つの人工知能が人類を敵とみなしたとしても、ほかの人工知能が止めに入るような生態系を作っていくことが重要です」(高橋氏)

このようにシンギュラリティは連続的に起こっている変化として捉え、議論していくことが必要になる。そのとき重要なのは、北野氏が言うように地球環境や社会構造など幅広い視点で捉え人工知能やロボットを含むテクノロジーをどのように活用するのかということだ。

今回シンギュラリティ大学が開催する「グローバル・インパクト・チャレンジ」はこの考えを体現できる機会でもある。人工知能やロボティクスなどの先端テクノロジーを活用し、地球規模のインパクトを与える。このようなアイデアがある読者は参加してみるのもよいだろう。

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