高城剛氏に聞く IT革命の終焉とRNG革命の始まりとその先に待つ人間の進化とは?

2017.1.20

2016年4月20日、マイクロアド社が高城剛氏をクリエイティブディレクターに迎え発信していく次世代プロジェクト「Magic!」の第一弾、ドローンによる空間情報化サービス「Sky Magic」が発表された。
「Sky Magic」は高城剛氏とマイクロアド社長の渡辺健太郎が描く未来図の序章といっていいだろう。
この数年で社会に大変革が起こり、新たな進化を迫られる人類。彼らはどのような未来図を描いているのか、そして激動の時代を生き残るために私たちはどのように考え・行動すべきなのかを対談を通じて探ってみたい。

これから起こるインターネットの現実化と3つの社会革命「R・N・G」

−「Magic!」プロジェクトが始まる経緯はどのようなものだったでしょうか。

高城剛(以下高城):僕の仕事は、クリエイティブとテクノロジーを組み合わせて、現実的な新しいビジョンを考えることなのですが、あたらしい仕事を引き受けるかどうか決める際に、決定権者とお会いして、先方の「感度」を確かめることにしています。

大変申し訳ないことですが、「感度」が悪い方だといくら斬新な提案しても無駄になってしまうので、その時点でお断り申し上げるようにしています。そのほうが、双方のためですからね。

その点、マイクロアド社長の渡辺さんに初めて出会ったときに、なかなか面白い人だなと感じました。だから今日のこの場があるのです(笑)。

なにより、マイクロアドを取り巻くテック業界は大きな変化が頻繁に起きています。2007年に革命的デバイス「iPhone」が登場し、メディアを支えるデバイスがPCから、あっという間にモバイルに変わりました。

これが近年の「目に見える大きな革命」なのですが、これから数年でもっと大きな革命が起きるように思います。

それをわかりやすいトレンドワードで言えば「IoT」で、あらゆるモノにセンサーがつき、ネットワークにつながっていくのです。車や冷蔵庫、そして歯ブラシさえも。そのなかでも画期的なのが「空を飛ぶモノ」の登場です。これを今のワードでは「ドローン」と呼んでいます。

Image title「Magic!」プロジェクト・クリエイティブディレクター 高城剛氏

今から三年前に、僕が「もうじきカメラが飛びますよ」と話しても、誰も信用しませんでした。だから、あえて今日いいます。「もうじきモニターから情報が飛び出します」と。

たとえば、超小型ドローンのような飛翔体が小さなRGBの粒になって空間に情報を作り出すような世界です。
そこで、まずはイメージを映像化しようという話になりました。この未来の物語の舞台は、2020年代のアジアのどこかの都市。その都市で繰り広げられる新しい情報テクノロジーと人の関係をテーマとした映像です。

しかし、映像を作っていくうちに、未来が僕たちに近づいたか、僕たちが未来に近づいたか分かりませんが、僕たちのイメージが、早くも現実化できそうだということが分かってきました。未来は僕らより前倒しで、まるで向こうから近づいてきたのです。

渡辺健太郎(以下渡辺):高城さんに初めて会う2週間くらい前に社内で新規事業をいくつか考えていて、その1つに広告・メディアとドローンを組み合わせるというアイデアがあって、高城さんに実際お会いして映像を作ることになりました。
そこからドローンへの注目度が高まったのですが、実際ドローン関連のイベントに行くと予想以上に速いスピードでテクノロジーが進化していると感じます。

CES(米国で毎年開催される世界最大のテック見本市)にも2015年、16年と行きましたが、1年でドローン関連の出展数がすごいスピードで増えてました。

パソコンのときと比べて、ドローンの発展・普及スピードはかなり速いですね。

実際、1年で世界のあらゆるところで、これまで映像化できなかったものが映像化されYouTubeなどで見れるようになって、今までのスピードではないなと。

Image titleマイクロアド社長兼Catalyst監修役 渡辺健太郎

高城:CESには2年連続でご一緒しましたが、出展数は3倍以上になってました。すごい勢いで増えていて、小さい企業を含めると数えきれないほど。

長年テクノロジーの発展を見てきてドローンを含むロボティクスやIoTの現状はIT産業が発展する前の1993年の状況に非常に近いと思っているんですよ。当然ながらアマゾンもなければ、Yahooもないし、Googleもなかった時代ですよね。

当時僕は全米計算機学会の会員だったんですね。その1993年の分科会SIGGRAPH(コンピューターグラフィックス学会)がフロリダで開催したイベントで見た光景が、ドローンの今と酷似しています。

そのイベントはタイムワーナー社主催で、海辺に置いたスーパーコンピューターを使って、映画、音楽、本、そしてピザまでも家にいながらにして購入できるというデモンストレーションです。そこにいたほとんどのひとはピンときてなくて、ところが一部のひとたちはピンときてたわけです。

ご存知のように今では、音楽も本も映画も家にいながら何でも買えますよね。
その一部のピンときてたひとたちが今の勝者になったように思います。

テクノロジーの世界ではこのように15〜20年くらい先に種がまかれているんですね。ドローンはまさに今種がまかれている状況で、当時と非常に似ていると思っています。

ドローンもコンピューターと同じように、スタンドアローン型とネットワークにつながったものの2種類あるんですよ。

コンピューターのスタンドアローン型の例はAdobeやエクセルなど。ネットワークにつながったものとは、メールやブラウザを見るコンピューターですね。

現在のドローンを取り巻く状況は、手動で飛ばすスタンドアローン型ドローンがほとんどですが、今後はネットワークの延長線上にある無人でネットワーク型ドローンが市場を席巻することになるでしょう。
コンピューターがそうであったように。

Googleのクローラーがネット上を行き来するように、ネットワークの延長上にあるドローンがリアルワールドを飛び回るような時代がこれから10年くらいで実現し、世界を変えるようになると、僕をはじめ多くの識者は考えています。

渡辺:1993年頃といえば、インターネットはあったけども知っていたのは本当に一部のひとたちだけで、ほとんどのひとは知らなかった。

高城:そうですよね。ほとんどのひとはまだサイトも見たことがない。

渡辺:通信もまだパソコン通信がメジャーだった。

高城:そう、アメリカオンラインとかはダイアルアップの時代。これから来る時代は、この状況に似ているかな。

これはドローンだけに限らず、自動運転とか、最近だとエッソプレッソマシーンまでネットワーク化されているわけだけど。そういう現実化するインターネットが、おそらくこれから10年で爆発すると思いますけどね。

シンガポールのスターバックスには「クローバー」って入ってるのかな?

クローバーの説明をすると、今までコーヒーを入れるのはバリスタというひとだったんですよ。もちろん今もそう。バリスタというひとがコーヒー豆の匂いを嗅いで、これくらい酸化してるから、これくらい抽出したらいいだろうって、手動でやっていたんですよね。

ところが、スターバックスのクローバーっていうのは、ネットワーク化されたエッソプレッソマシーンで、アメリカのどこかに巨大なAIみたいのがあって、そこで豆の品質とか室温とか全部管理して、最も適切な抽出でコーヒーを入れてくれるんですね。

このネットワーク端末のエッソプレッソマシーンをクローバーといって、東京では試験的に10台ちょっとしか入ってないんだけど、シンガポールでもひょっとしたらどこかにあるかもしれませんが。

おそらく、世界中でバリスタはネットワークとAIとロボティクスになっていくんですね。最後にコーヒーを出すのとお金を集金するのはひとで、それ以外ところはロボティクスに代わっていくわけですよね。

そうやって僕らの知らないバックエンドのところも、あらゆるものがネットワーク化される。インターネットが現実化されるんですよ。これから10年かけて。

今日はこうやってひとがカメラを撮ってますけど、10年後は分からないですよ。

渡辺:ドローンが撮るとか。

高城:飛ぶかどうかは分からないし、地上を動くカメラかもしれないけど、ひとがほとんど介在しないかもしれない。

撮影の現場でたまに「まだフィルムで撮ってんだ?」みたいなことがあるように10年後には「まだひとが撮ってんだ?」っていうことが十分あると思いますけどね。

−なるほど。テクノロジーの発展で生活環境が大きく変わるということですね。

渡辺:AirbnbとかUberとか、所有が流動化したり、誰でもタクシードライバーになれて、隙間時間を使ってお金を稼げるようになる。

高城:大きな社会革命は1975年くらいから始まったんですよね。
それは何かというと、パーソナルコンピューターから始まっていて、1975年から1995年までいわゆるパーソナルコンピューター革命で、1995年になるとコモディティ化するんですよ。1995年から2015年がいわゆるインターネット革命で、これによってわれわれの生活も大きく変わってきたわけですよね。

そして、2016年から2035年まで20年かけて3つの革命があると言われているんですね。それはRNGと言われていて、ロボティクス、ナノテクノロジー、そして遺伝子工学なんですよ。このRNGを分子として、分母はAIです。これが20年かけてものすごく変わるんですよ。

その序章であるロボティクス革命で今までとは決定的に違うことは、反重力、すなわち空を飛ぶということです。ドローンがネットワークにつながるということは、ネットが重力に挑戦していると言ってもいいでしょう。

ロボット革命で最もすごいことはアンタイ・グラビティー、すなわち空を飛ぶということなんですよ。これによって物流も変わるし、撮影も変わるし、あらゆるものが変わる。

ロボティクスのなかで最もすごいことは、ドローンと呼ばれるものか分からないですけど、重力に挑戦するものだと思います。

渡辺:そう、たしかに。目覚まし時計が飛んで、起き上がらないと止めれないとか。
今あるもののほとんどが飛ばない前提で設計されているから、それが飛ぶようになったらどうなるんだろうって考えると、いろんなものが変わるのかなと。

インターネットも昔はビジネスにならないとか、ホビー用にしかならないと言われていたんですけど、つながることでその前の世界では考えられないものが世の中の主流になっていて、飛ぶ前提で考えると新しいものが生まれる気がするんですよね。

Image title

テクノロジーの進化がもたらす社会変革と進化を迫られる人類

−テクノロジーの進化がもたらす社会革命で私たちのライフスタイルが大きく変わるのは間違いないですね。
これから来る大変革に備えて個人はどのように意識を変え、行動すればよいのでしょうか。

高城:テクノロジーの発展に伴って、これまでなくなっていった商売はたくさんあるんですよ。駅の改札の切符切りなどいろいろなくなっていって、やっぱり自分を変えていくしかないんですよ。

ある総合研究所のレポートによれば、人工知能・ロボティクスの発展で20年後には今の職業の約50%がなくなるとされていますが、僕は正直もう少し多いと思っています。
チェスマスターどころか、コーヒーを入れるバリスタさえも、すでにロボットに完敗しています。

インターネットの変化を見ていると圧倒的だと思うんですけど、もっとすごい変化が起きたときにさらに変化が起こる。そうなると、テクノロジーを享受するだけでなく、自分を変える必要がでてきます。

−なるほど。具体的にどう自分を変えていくのが良いのでしょうか。

高城:2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)が起こるとされています。

人工知能が人類の知能を超え、コンピューターがコンピューターを作る、プログラムがプログラムを作るという時代にいよいよなっていくと言われているんですね。完全に人間の知能をシミュレーションしているわけです。

Googleの人工知能責任者レイ・カーツワイル氏が目指しているのは、人工知能は人間の大脳新皮質をシミュレートしたものですが、僕が考えているのは、より先進的で、ある意味パンクなのですが、人工知能が「今の人間」をシミュレートしているとすれば、人間が進化することで人工知能より優れた人間になれると考えています。

僕はそれを6万5000年ぶりの人間の進化のタイミングだと思っています。

人類の祖先は10万年前に生き残ったホモサピエンスと言われています。ホモサピエンスが体躯のいいネアンデルタールなど他の種族より生き残ったのは脳が進化したからで、僕はこの進化を「ヒューマン1.0」と呼んでいます。

当時、アフリカに住みついたホモサピエンスは2万人くらいの人口だったとされています。
しかし、一説によれば6万5000年前に大きな気象変動が起こり、全人類滅亡の危機に直面し、そのうちの数百人がアフリカから紅海を渡り、世界中に散らばりました。

この危機の中で一部の人が進化し、だからこそ外へと向かったのです。
それを僕は「ヒューマン2.0」と呼んでいます。
そして、この紅海を渡ったわずか数百人が、現在の70億人を超える人類の祖先となりました。

このように人類は、脳の進化を重ねて、生き残ってきました。
そして今、僕たちはヒューマン3.0に向かわなければいけない人類滅亡の危機に直面した時代に入ったと考えています。

僕たちが進化することで人工知能を超えた新しい人類が誕生する。
正直、どうやって生まれるのかは分かりませんが、今後20年から40年にかけて人類の進化が一部の人たちに起こると考えています。
経済格差ではありませんが、その時、進化できる一部の人と進化できない多くの人に別れるでしょう。

渡辺:昔SF映画で見たような世界になってきたと思います。
『CATALYST』で、バイオハックというテーマで自己改造を実践し、ひとの寿命やパフォーマンスはまだまだ伸びる可能性があると思うし、今の60歳、70歳と20年後の60歳、70歳は違うと思うんですよね。

そうなると昔の寿命や健康情報を前提としたライフプランというものが意味を成さなくなると思ってます。
テクノロジーの進化で、仕事も半分以上なくなって、寿命・健康年齢も大きく変わる。

つまり、未来に対して考える前提が変わってしまうということですね。

高城:先ほどお話ししたAIを分母にしたRNG革命である2016−35年を、僕はエクステンデッド・インターネット、つまりネットの現実化が進む20年だと考えていて、その次に来る20年(2036−55年)は、エクステンデッド・ヒューマンライフ、すなわち一部の人間の寿命が爆発的に伸びるのです。

寿命が伸びるので人口が増え、他の多くの理由も伴ってバイオキャパシティ(地球が本来持っている環境受容力)を遥かに超えてしまい、地球だけではやっていけなくなる時が来る。
そこで2056−75年はエクステンデッド・プラネット、つまり地球外に出て行くという動きが活発化すると僕は考えています。

Image title

渡辺:そうですよね。イーロン・マスク氏がやっている宇宙事業は、まさにこういうことを想定してのことだと思いますね。

高城さんのトークイベント『旅は、人を幸せにするのか』でお話しされていましたが、これからの10年は大観光時代が始まるのだけれど、最後の10年でもあるということ。

つまり、秘境も消費されてしまい、地球上から秘境というものがなくなってしまう。

高城:そう。地球上は全部開発されて大観光時代になるわけですよね。
悪い面は、開発により地球の生態系を大きく変えてしまうことです。

現在、バイオキャパシティは年間40%オーバーで推移していて、このままでは2020年前後には「ポイント・オブ・ノーリターン」に到達します。
残念ながら、まず回避することはできません。
僕たちが生きている間に来るかは分かりませんが、地球が生態系としてダメになる日は必ず来るのです。

そのときにどうやって生き残るのかということも考えないといけない。

渡辺:そうですね。
いろんな本を見ていても、そういう未来シミュレーションでは同じ時期に同じようなことが起こると予想されていて、この先をどう生き抜くか危機感を持って本気で考える必要があるなと思いますね。

それこそ、むしろライフプランに入れることが必要なんじゃないかと。

高城:カギは人間の進化ですよ。どう進化するのかは分からないけど、どうやって人間が次のステージに行くのかずっと考えていてね、ロボティクスとかドローンっていうのはその始まり。

ヒューマン1.0、2.0の進化を考えると、進化するのは脳だと思いますね。

「ゾーン状態」や「フロー状態」と呼ばれるように、人間は通常より高い能力を発揮できることは徐々に一般化し、「フロー」という概念を提唱した心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏は人間は恒常的にフロー状態になれると唱えています。

渡辺:なるほど。

高城:普通の人間は脳の3〜6%しか使ってないのが、おそらく15〜20%使えるようになるかもしれないということ。

ヒューマン1.0の進化で、人類は脳の1%以上を使えるようになったと仮定し、ヒューマン2.0では3%から6%の脳を使えるように進化した。そして、ヒューマン3.0で脳の15〜20%を使えるようになれば、「世界は大きく変わる」のです。所詮、人工知能がシミュレートしようとしているのは、脳の3%にすぎないのですから。

このような人間の進化がいつどうやって起こるのか、新しい仕事に挑みながら見つけ出すのが、今の僕たちの課題と使命だと思いますね。

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