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パーキンソン病を声で診断可能!?ー裏から支えるTwilio社

人工知能やスーパーコンピューターなど先端テクノロジーの進化がもたらす「新産業革命」。蒸気機関の発明がもたらした産業革命のように経済・社会構造がガラリと変わるのは間違いないだろう。

一方、新産業革命といっても、朝起きたらいきなりすべてが変わっていたということではなく、少しずつ変化していく連続的なプロセスであり、それはもうすでに起き始めていると認識するのが重要だ。

「働き方」も例外ではなく、テクノロジーを取り入れながら少しずつ変化している。

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今回は『CATALYST』がシリコンバレーで見た「働き方」の変化の予兆についてお伝えしたい。

「知のネットワーク化」を可能にするAPIテクノロジー

電話に話しかけるだけで、人工知能などの技術で声や言葉を分析して病気を診断できる。

そんな未来の技術が確立しつつある。

「パーキンソンズ・ボイス・イニシアチブ(PVI)」。現在パーキンソン病の診断には膨大な費用がかかり、簡単なことではない。これを解決しようとパーキンソン病患者1万人以上の声データを集めて解析し、低コストの診断ツールを開発する計画が2012年に始まった。

パーキンソン病の初期段階で見られる症状は、声の震え、気息、声量の減少などだ。これらは非常に微妙な変化なので気付くのが非常に難しい。こうした微妙な変化を検知するために、大量の声データを分析し、診断用のアルゴリズムが開発されている。

現在、パーキンソン病患者は世界で約600万人、2030年までに1000万人に増加するとも言われている。一方、パーキンソン病は早期発見・早期治療により進行を遅らせることができる病気。このためPVIの取り組みに大きな期待が寄せられている。

PVIの取り組みの成否を分けるといっても過言ではない声データの取得を裏で支えるのが通話・SMSのAPIテクノロジーだ。

このAPIを提供しているのはTwilioという米シリコンバレーのスタートアップ。聞き慣れない名前かもしれないが、UberやAirbnbなど「エクスポネンシャル・オーガニゼーション」と呼ばれる企業を裏から支える重要な企業だ。米メディア大手CNBCが発行している注目テクノロジー企業リスト「Disruptor 50(2016年版)」では39位にランクインしている。

APIとはアプリケーション・プログラム・インターフェイスの略語。APIを利用することで、自分が作っているアプリケーションに、すでにあるプログラムを呼び出して使うことができる。これにより、すべてのプログラムを自前で作る必要がなくなり、強みのある分野にリソースを集中投下して、迅速にサービスを立ち上げることができる。

短期間にエクスポネンシャル(指数関数的)な成長を遂げたUberは、このAPIをフル活用することで現在の地位を築くことができたと言ってもいいだろう。

スマホでUberアプリを立ち上げると、地図が出てきて配車可能な車を探すことができる。配車車両を選ぶと、そのドライバーとテキスト・音声でのやりとりが可能になる。目的地に到着すると自動で決済が完了する。

このUberアプリの一連の流れのほとんどはAPIを使ったものだ。地図はGoogle MapのAPI、決済はBraintreeのAPI、そしてテキスト・音声でのやりとりはTwilioのAPIを利用しているのだ。

Image titleTwilio社

Uberだけでなく多くの企業がAPIを利用することで、サービスを迅速に立ち上げることに成功しており、その可能性は「APIエコノミー」という言葉で表現されるようになっている。IBMがAPIエコノミーの市場規模は2018年までに2.2兆ドル(約250兆円)に拡大すると予想しているように、そのインパクトは非常に大きいものだ。

APIエコノミーの拡大は、テクノロジーの進化を加速させる可能性があるので注目すべきだろう。

なぜならAPIとは、ある知識と別の知識をネットワーク化して、新しいものを創造するスピードを加速させることができるからだ。UberというサービスがAPIによって可能になったように、今後さまざまな領域でAPIを通じたイノベーションが起こっていくかもしれない。

PVIでは、Twilioの音声APIがパーキンソン病診断のカギとなる音声データ取得に非常に重要な役割を果たしている。

「プラットフォーム」という働く空間

Twilioはさらに「APIプラットフォーム」というAPIの新しい形を実現し、知の集約・連鎖を可能していることも特記しておくべきだろう。

TwilioのAPIプラットフォームでは、ユーザーがAPI上で開発したしたアプリケーションをAPIのアドオンとして販売できるのだ。

たとえば、IBMはTwilioのAPI上で人工知能ワトソンを使ったメッセージ解析機能を開発し、この機能をアドオンとして販売している。これはワトソンがメッセージを解析し、メッセージ送信者がどのような感情なのかを突き止めることができる機能。

Twilioのプロダクト管理責任者、パトリック・マラタック氏が「イノベーションをつくる場としてのコミュニケーション・プラットフォームを提供している」というように、さまざまな知が集まり、そこから新しいものを生み出す空間として成り立っているのだ。

Image titleプロダクト管理責任者パトリック・マラタック氏

このように先端を行くシリコンバレーを見てみると、UberやTwilioのように国境・組織を超え「知のネットワーク」「知のプラットフォーム」を活用することが次代の働き方を示唆しているように見える。

Tesla Motorsのイーロン・マスク氏が掲げる超高速列車プロジェクト「ハイパーループ」に取り組むrLoopが米国版2ちゃんねる「Reddit」というプラットフォームから始まり、10カ国以上から集まるメンバーたちがオンライン上でプロジェクトを進めているということもそれを物語っている。

以前紹介したシンギュラリティ大学も、知が集まりネットワーク化され、イノベーションが生まれる場として世界中から注目を集めている。

新産業革命、そしてシンギュラリティへ、世界は少しずつ変化し始めている。「知のネットワーク」「知のプラットフォーム」を活用するなど、自分なりの新しい働き方を探し始める良いタイミングではないだろうか。

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