日本初上陸!最先端フィットネス THE TRIPとは?

2017.1.20

2016年は「バーチャル・リアリティ(VR)元年」といわれている。

リリース間近の、フェイスブック傘下のオキュラスVRによる「Oculus Rift」を筆頭に、グーグルの「Google Cardboard」、サムスンの「Gear VR」など、VRに特化したヘッドマウントディスプレイが市場に出回るだけでなく、付随するアプリの開発も盛んになってきている。
米国の投資銀行、パイパー・ジャフレーは、VR市場は2025年までに54億米ドル(約6,520億円)にまで成長すると予測。

現在すでに取り入れられている映画やゲームといったエンターテインメント分野に留まらず、教育や医療といった、日常生活への活用も進むと考えられている。

VRを活用した最先端フィットネスとは?

そんな分野のひとつが「フィットネス」。

日本を含む世界80カ国の1万5,500ものクラブに18のプログラムを送り込んでいる、ニュージーランドのレス・ミルズ・インターナショナル社がVRをエクササイズに取り入れているのだ。名づけて「イマーシブ・フィットネス」。

特設スタジオに設置された大型スクリーンに映し出されるデジタル・プロジェクションと音楽という「没入型」の環境でのクラスを提供している。

スクリーンの大きさは、正面の壁を覆う高さ3メートル、幅7メートルのものから、三面の壁を利用し、270度に広がるものまでさまざまだ。
音楽は映像に合ったものが吟味され、映画館並みのサウンドシステムを通してギャップなしに流れる。

現在参加できるイマーシブ・フィットネスはサイクル・エクササイズの「THE TRIP」。
英国のロンドン、フランスのパリ、香港、スウェーデンのストックホルム、米国のロサンゼルス、そしてニュージーランドのオークランドで行われている。

没入型環境を最大限に生かすために、隣のサイクルとは65センチ、前後は各50センチ以上の間隔を取り、かつ各人の視界が開けるように配慮されている。オークランド市内のニューマーケット・スタジオでは、一度に40人がエクササイズできるようになっているが、参加可能な人数は場所によってさまざまだ。


イマーシブ・フィットネスのひとつ「THE TRIP」。
参加者はこうした映像の世界に入り込み、ペダルを踏む。

「THE TRIP」で参加者は、スクリーンに映し出される、コンピュータグラフィックスで創り出された、近未来都市に代表される想像上の世界や、氷河といった実際には行くことができない場所を35分間にわたって走り抜ける。実際に乗っているのは、固定されたエクササイクルだが、皆、映像が上りにさしかかれば、より一層漕ぎ、下りにくれば、スピードを緩め、カーブでは、体を傾斜させ、天井が低ければ、体勢を低くする。バーチャルな世界に没入して自転車漕ぎをしているのが明らかだ。

心肺機能を高める運動の中でも、「THE TRIP」を含めたイマーシブ・フィットネスには特有のメリットがあるそう。今までになかった試みのため、効能についての科学的な裏づけは目下検証中とのことだが、プログラムを提供するレス・ミルズ・インターナショナル社は日々そのポテンシャルを目の当たりにしている。
スクリーンの世界に入り込んでのエクササイズは楽しく、継続しやすいのは言うまでもなく、さらに、厳しい内容を長時間にわたって、自然に行うことができるという。

つまり、目前で展開する映像とマッチする音楽に没頭するがために、「終わるまであとどれぐらい時間は残っているのだろうか」というような雑念がわく余地はなく、運動に対する辛さからも解放される。おかげで、知らず知らずのうちに自分の運動能力の限界に挑戦できるというわけだ。

またエンターテインメント性を持たせたエクササイズは、運動が好きではない人、ワークアウトを始めたばかりの人にとって、取り組みやすく、体を動かすことの楽しさを知る良いきっかけになる。そのまま継続すれば、運動能力も伸びていく。

利用者からはこんなコメントが聞かれた。

「冗談抜きに、『TRIP』してしまった感じ。上れるはずのない急な氷河を自転車をこいで上がって、スクリーン上の競輪場を全力疾走して……本当に非現実的な世界だったわ。没頭しすぎて、角を曲がる時に体を傾けたら、自転車から落ちそうになるほど。こんな風に没入してしまう自分に驚かされたわ。世界で初めて全面的にコンピュータグラフィックスを導入した『トロン』という映画を知ってる? まさにあの世界そのものだったのよ」

レス・ミルズ・ジュニアは、既存のものに執着せず、人々が新たに求めるエクササイズはどんなものなのかを一から考え直して、イマーシブ・フィットネスを産み出したというレス・ミルズ・ジュニアは、既存のものに執着せず、人々が新たに求めるエクササイズはどんなものなのかを一から考え直して、イマーシブ・フィットネスを産み出したという

テクノロジーが従来のトレーニングのコンセプトを根底から覆す

イマーシブ・フィットネスの考案にあたり、ベースとなったのは、人びとが健康で幸せな生活を送るために、フィットネス業界が今後どのように貢献できるかをまとめた白書、『フューチャー・オブ・フィットネス』。同業界や関連業界を牽引する人びとや研究者の意見、現場での視察、データがもとになっている。

消費者の視聴・購買行動に関する市場調査を行うニールセン社とシネージア社によりリサーチが行われ、レス・ミルズ・インターナショナル社から刊行されたものだ。白書内には、日々発展するテクノロジーと運動との関わりが主に書かれている。

そこで注目されているのは、「ミレニアル世代(18~34歳)」。ジムで行われるタイプのエクササイズを実践しているのが最も多いのがこの世代で、世界13カ国4,600人を対象に行われたリサーチで約48パーセントを占めるに至っている。
ミレニアル世代の特徴は、デジタル機器やインターネットに抵抗がないということ。彼ら、彼女らはデジタル化された生活のもとに生まれ、育っているからだ。

また、コンピュータ/ビデオゲームの高い普及率も挙げられている。コンピュータ/ビデオゲームのソフトを開発・販売する企業で組織されたエンターテインメント・ソフトウェア・アソシエーションが米国内の同ゲームの普及についてまとめた「エッセンシャル・ファクツ・アバウト・コンピュータ・アンド・ビデオ・ゲーム・インダストリー・2015」によれば、ゲーム機を持つのは、4,000世帯を超える調査対象の51パーセント、週に3時間以上ゲームをするとした人は42パーセントに上る。

こうした現状を踏まえ、白書では、今後フィットネス業界が生き残るための道のひとつとして、テクノロジーの導入を示唆している。

白書中、近い将来、同業界が進む可能性が高いと推測しているニッチが、「楽しみがモチベーションとなってのエクササイズ」。運動は、あくまで楽しい経験の「副産物」であるという考え方だ。

つまり、「ああ、楽しかった」とやり終えてみたら、体が鍛えられていたという新しいスタンスは、厳しいワークアウトをこなしてこそ体は鍛えられるという、従来のトレーニング像を覆すものといえそうだ。

「スクリーンに映し出される曲がり道や坂道が、自転車上の自分の体で本当に感じられるんだ。下り坂なんて、猛スピードで下りていくから、スリル満点。あまりにリアルなので、中には乗り物酔いになった人もいたみたいだよ」(利用者)

イマーシブ・フィットネスの考案者のひとりであるレス・ミルズ・ジュニアはこの新しいコンセプトを、「エクササイズ」と「ゲーミング」を合わせ、「エクサゲーミング」と呼んでいる。

ゲーム、スポーツ、ダンスをミックスした、楽しいからこそやるアクティビティだ。
今後テクノロジーが発達するにつれ、エクサゲーミングは、さらに進化を遂げると彼は考える。

次段階では視覚や聴覚はもちろん、嗅覚、味覚、触角と五感で体験するものに発展すると同時に、ソーシャルネットワーキングの要素も取り入れ、仲間と共にしばし現実から離脱し、バーチャルな世界に没入して楽しむものになると予測する。

その名も「エクサテイメント」。

私たちが「エクササイズ」と「エンターテインメント」が融合したエクサテイメントにトライできるのも、時間の問題といえそうだ。

イマーシブ・フィットネスのお披露目は2014年5月にロンドンっ子600人を集めて行われた。その後、ヨーロッパ、米国、香港をツアーし、このプログラムに対する確かな手ごたえを得たそうだイマーシブ・フィットネスのお披露目は2014年5月にロンドンっ子600人を集めて行われた。その後、ヨーロッパ、米国、香港をツアーし、このプログラムに対する確かな手ごたえを得たそうだ

2017年2月には、渋谷駅徒歩1分の立地に、日本初上陸のVRを用いた感覚のサイクルプログラム「THE TRIP」を導入したようだ。

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