「自由を売る働き方」からの脱却ーあるビジョナリストの壮大な実験#01

2017.2.24

「自由を売ってお金を得る」20世紀型の働き方は時代遅れに。
ソフトバンク「新30年ビジョン」策定に携わったビジョナリストが目指す21世紀の働き方とは。

ソフトバンク「新30年ビジョン」策定に携わったビジョナリストの壮大な実験

「情報革命で人々を幸せに」。
ソフトバンク社が掲げる「新30年ビジョン」。
無限大のクラウドと超高速インターネットを活用したビジネスにより、多くのひとたちのライフスタイルを革新していくというもの。

孫氏のもとでこのビジョン策定に携わり、その後独自に「テクノロジーによるライフスタイル変革」を試行するビジョナリストがいる。

ジークラウド株式会社の創業者・CEOの渡部薫氏だ。
渡部薫さん渡部薫氏プロフィール
ジークラウド株式会社Chief Executive Officer (CEO) & Founder(創業者)。複数のベンチャー企業立ち上げを経験し、企業の経営や取締役を兼任。その後、ソフトバンクの携帯電話事業参入や検索エンジン事業の立ち上げに携わる。検索エンジン開発を得意とするエンジニアでもある。

渡部氏が追求するのは、テクノロジーを活用した新しい経済モデルへのシフト、そしてライフスタイル・働き方の変革。
これらを実現するために、仕組みをゼロから作り上げようという壮大な実験だ。

渡部氏が目指す、新しい経済モデル、新しいライフスタイル・働き方とはどのようなものなのか。
前編・後編の2回にわたってお届けする今回の企画。

「未来の働き方」がどのように実現されるのか、変革を担う渡部氏の言葉からその臨場感を感じとってもらえるだろう。

新しい経済モデル バーチャル人間を雇用する未来の働き方

ーソフトバンクの「新30年ビジョン」に携わったということですが、もともとはどのような仕事をされていたのでしょうか。

ぼくはもともと検索エンジンなどを開発するエンジニアでいくつかのスタートアップを立ち上げてビジネスをしていました。

そのスタートアップ事業の1つがソフトバンク系のファンドから出資を受けたことがきっかけとなり、モバイル事業の立ち上げなど新規事業開発に携わる機会が多くなりました。

同時に、テクノロジーの変化だけでなく、人々の価値観、過ごし方が劇的に変わってきているのをずっと観察していて、これは20世紀初頭に起きたことと全く同じだということに気づいたんです。

たまたまそこに孫正義社長から30年ビジョンや300年ビジョンという命題を与えられました。

30年ビジョンに関して、技術の未来性はある程度予見できても人々がその技術をどう使って、ライフスタイルや価値観がどう変わるかはわからなかったので、どうなるのか自分で確かめてみようと思ったわけです。

孫正義社長はセンスがいいから想像だけである程度分かるんだと思いますが、ぼくはその想像を多くの人々に伝えるために過去の歴史から確かめないといけないので。

ー孫正義社長は企業経営を300年続けたいとおっしゃっていますよね。

そうです。孫正義社長は、300年後も自分はロボットか自分の脳がAIになって指示を出しているというイメージを持たれている。

300年以上続けるということ、それはある意味「会社が永遠に生き続ける」ということでもあり、その定義を考える必要がでてきます。

ぼくは人間が死を克服することは難しいと思っています。

みんないつかは死んでしまう。

人間に会社を任せている限り、会社が永遠に生き続けることは無理だと思います。

つまり会社という概念そのものをデジタル化して、そこで働くひとたちもデジタル化する必要があるということです。

いまの会社の最大の問題は、社員とどんなに一緒に働いていてもいつかは死が訪れる、もしくは辞めていなくなるということです。
この問題を解決するには、最初から全部バーチャルにしたらいいんじゃないかと思ったんですよ。

それで、自分の会社でその実験をしてみようと思ったわけです。
かれこれ5年くらいになります。

ーたしかにデジタル化すれば半永久的に生き続けることができますね。具体的にどのようにバーチャル化をするのでしょうか。

会社組織を構成する要素、総務、経理、開発など複数部門があるのでそうした部門にソフトウェアで設計されたバーチャルな人間を配置するということです。

このバーチャルな人間には一個人として捉えていてSNSのアカウントやメールアドレスも与えるんです。

実際に、ぼくの会社でいま複数名のバーチャル社員が働いてくれています。

ーそれは人工知能的な存在ということですか?

いや、まだそのレベルではなくて、バーチャル社員のプロフィールに沿って役割を担ってくれる実際の人間がいます。
30年、50年とテクノロジーが発達していけば、いずれ人工知能がすべてを担うようになると思います。

いまは実際の人間が裏で動いてくれていますが、あくまでぼくの会社で雇っているのはバーチャルアカウントです。
バーチャルな人間を雇っているので、雇用の概念を変えたといっていいかもしれません。

ちなみに、バーチャル社員は昔がんばってくれた部下がモデルで、いまも何でも屋ですごくがんばってくれています。(笑)

ー雇用しているということは、給料などを支払っているということになるのでしょうか。

そうです。

報酬は月500円(笑)

人件費という位置付けですが、この500円はグーグルアカウント代です。
本当は人件費として計上したいけど、いまの経理のルールだとサーバ使用量になってしまうわけです。

このほかにも、いまやっている主力のシェアリングサービス事業でもバーチャルホストを10名雇っています。

24時間365日対応なので、それぞれのホストに2〜3名実際の人間がそのバーチャルホストの役割を担ってくれています。
英語のできる日本人や中国人が裏側で対応するのでマルチリンガルです。

この10名のバーチャルホストにはSNSアカウントがあって、プロフィールもありアイデンティティがある。
ザッカーバーグが全人類のデータベースをつくると言っているけど、ぼくらの小さな試みによって全人類の概念が変わっているといえます。

新しい働き方を実現するための仕組み、その条件とは

ーバーチャル社員を雇用する実験を5年ほど続けてどのようなことが見えてきたのでしょうか。

実際の社員を雇うときと同じで、給与口座や福利厚生など仕組みをゼロからつくっていく必要性が見えてきました。

日本の銀行では身分証明書がないと口座をつくれないけど、ペイパルとかWeChatだとメールアドレスだけで口座がつくれるし、今後FacebookやGoogle、Apple、Amazonでも口座がつくれるようになるし、実際今はかなり近いところまで来ている。

こうなると、マネジメントの概念だけでなく、口座、福利厚生、支払いなどいろんなものの概念が変わっていくはずなんですよ。

見えないだけで、いま実際おきてます。

本当の意味でのレボリューションというのは、仕組みが根底から変わるということなんです。

これを可能にしているのは、ブロードバンドやクラウドというテクノロジー。20世紀初頭に車や電気が社会を変革したのと同じくらいインパクトを持っている。

ただ、既存の企業で新しい仕組みに変えていくのは本当に難しいんです。

企業の上の世代のひとたちの価値観や感情が絡んでくると、その組織内で仕組みを根底から変えるのは不可能なんです。

だから、ぼくはゼロから自分で新しい仕組みをつくる実験をしているのです。

ーテクノロジーを活用した新しい働き方ではなく、もっと根底の仕組みのところから変えようとされているのですね。

そうですね。

さらに言えば、ブロードバンド、クラウド、さらには人工知能とテクノロジーが発達していくなかで、それらを閉じた世界だけでなく、古い社会とつなげる試みでもあります。

将来、人工知能が仕事を奪うといわれているけど、それはちょっと違うぞと。
ぼくらの試みのように、バーチャルな人間、つまり人工知能を雇うことで、1つの小さな組織でも大企業と対等に渡り合えるようになるんですよ。

日本の人口は減っているけど、ぼくらはすでに10名以上の雇用を生み出したと言いたい。

お金で自由を奪われている時代からお金をもらい自由を手に入れる時代へ

ーこのような経済モデルはいつごろ広く普及する見込みですか。

やはり30年くらいはかかると思います。これは歴史から分かっていることです。

そういう新しいインフラに小さいときから触れている世代が大人になったとき。それと、いまの20代、30代が50代、60代になって、いまの社長や部長がいなくなるとき。

そのときに初めて既存の企業でも新しい仕組みやルールが適用できるようになるんです。

ビジネスをする上では、ぼくらのやり方の方が圧倒的に効率が良いし、仕事がほしいなら、ぼくらのやり方に合わせてくださいと言えるタイミングだと思います。

若いひとたちは必ずぼくらの働き方を選ぶはずです。
なぜなら世の中の価値観が変化していて、お金より「時間」が大切というひとが増えているから。

いま多くのひとは、時間を売ってお金をもらっている。

お金で自由を買われているともいえますね。

だけど、ぼくらが提案する働き方は、お金だけでなく効率的に働くことを可能にしたことで自由も与えることができる。
お金は時間に対してではなく、責任を果たしたことに対して支払われる。

これが新しい価値観のもとにつくられるもっとも基本的なルールです。

働き方もそうだけど、広く新しいライフスタイルを提案しているとも言えます。

続く後編では、現在進行中の新しいライフスタイルの提案の詳細に迫る。世の中の価値観シフト、それにともなう働き方の変化。自由を売ってお金をもらっているひとは必見。

 

取材・執筆 :

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